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韓国の高齢者就業率OECD加盟国で最高の38.2% 喜んでいられない「働かざるを得ない」現実とは

2025年7月24日(木)15時40分
佐々木和義

タプコル公園に集う高齢者たち

タプコル公園はソウル中心部・鐘路(チョンノ)にある小さな公園。日本統治下には独立運動家たちが独立宣言文を読み上げた場所だが、今は高齢者たちの集う場所として、Netflixの『イカゲーム』シーズン2にも登場した(撮影=筆者)

中小企業の生産性の低さも課題に

今後、改善の見込みはあるのだろうか。現在、現役世代が負担する年金保険料は所得の9%、高齢者は現役時代の所得の40%相当の年金を受け取るが、2056年には国民年金の財政が枯渇するとみられている。政府は勤労者の負担を13%に引き上げ、受け取る年金額も現役時代の所得の42%相当に増額すると2088年まで年金制度を維持できるというが、2%増えたところで大した改善には繋がらない。

労働力不足も深刻化の一途を辿る。15歳以上の労働人口は27年の2948万5000人をピークに減少、実際の労働者も27年に2878万9000人とピークになった後は減少するとみられており、韓国雇用情報院は経済成長の見通しである1.9%から最大2.1%を達成するためには2032年時点で就業人口が90万人不足すると分析する。今年から定年を迎える「第2次ベビーブーム世代」が経済成長の鍵を握ることになる。

OECDは2018年の「韓国経済報告書」で「韓国では大企業と比較した中小企業の生産性は1997年のアジア通貨危機の時よりも低い30%台」と述べており、生産性が低ければ当然ながら賃金も低くなり、人材確保がさらに困難になる。

韓国では「祖父は後進国、父親は発展途上国、息子は先進国生まれ」とよく言われる。先進国で生まれ育った若者は給与が高い仕事を求める一方、途上国を経験した世代は仕事内容にこだわらないことも高齢就業者が多い理由の一つだろう。

韓国の高齢者就業問題は、年金制度、急速な少子高齢化、産業構造の変化、世代間の意識の違いなど、複数の要因が絡み合った構造的課題が根底にある。

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