「家事・育児・介護は女性の仕事」? ジェンダー慣行が強い地域ほど20代女性の流出率は高い

地域のジェンダー慣行は子どもの人間形成にも影響を及ぼす photoAC
<全国のジェンダー慣行の強さを比較すると、都市部と地方にはかなりの開きがある>
所違えば天気が違うのと同様に、そこに住む人の気質や考え方にも差があるものだ。「県民性」という言葉は誰もが知っているだろう。目に見えない空気のようなものだが、そうした環境は、そこで育つ子どもの人間形成に影響を与えている。
近年では、男女平等の推進の観点から、子どものジェンダー意識の形成要因に関心が向けられている。それは非常に多岐にわたるが、住んでいる地域において、有形ないしは無形のジェンダー慣行をどれほど目の当たりにするかも重要な観察ポイントだ。
内閣府の『地域における女性活躍・男女共同参画に関する調査』(2024年度)では、18~39歳の対象者に対し、中学校卒業時点で住んでいた地域(県)において、旧態依然のジェンダー慣行がどれほどあったかを尋ねている。以下の9つだ。
①地域や親戚の集まりでの食事の準備やお茶出しは女性の仕事
②自治会などの重要な役職は男性の仕事
③正社員は男性、女性は非正規社員
④職場でのお茶出しや事務などのサポート業務は女性の仕事
⑤子供が生まれたら、女性は仕事を控えめにした方がよい
⑥男性が前に立って、女性は後ろで支えるべき
⑦家を継ぐのは男性がよい
⑧家事・育児・介護は女性の仕事
⑨個人の価値観よりも世間体が大事
①について、「よくあった」「時々あった」と答えた人の割合は、東京出身者では18.7%だが、鹿児島出身者では36.0%となっている。倍の開きだ。他の設問についても、中卒時に住んでいた県(出身県)による差が見受けられる。
9つの設問への回答を合成して、ジェンダー強度を測る尺度を作ってみる。「よくあった」には5点、「時々あった」には4点、「わからない」には3点、「あまりなかった」には2点、「全くなかった」には1点のスコアを付ける。この場合、対象者が経験したジェンダー慣行の強さは、9~45点のスコアで測られる。
対象者を出身県で分け、このスコアの平均点を算出し、47都道府県の数値を高い順に並べると<表1>のようになる。
各県の出身者が、子ども期に経験したジェンダー慣行の強さだ。最も低いのは東京で、おおよそ都市部で値が低い傾向にある。若い住民が比較的多いためかもしれない。大学等の高等教育機関が多く、啓発の度合いが高いことも考えられる。だが、都市化のレベルだけで解釈できるような単純な構造でもない。各県の男女平等施策が関与している可能性もある。