最新記事
日本社会

「家事・育児・介護は女性の仕事」? ジェンダー慣行が強い地域ほど20代女性の流出率は高い

2025年7月9日(水)10時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
ジェンダー観イメージ

地域のジェンダー慣行は子どもの人間形成にも影響を及ぼす photoAC

<全国のジェンダー慣行の強さを比較すると、都市部と地方にはかなりの開きがある>

所違えば天気が違うのと同様に、そこに住む人の気質や考え方にも差があるものだ。「県民性」という言葉は誰もが知っているだろう。目に見えない空気のようなものだが、そうした環境は、そこで育つ子どもの人間形成に影響を与えている。

近年では、男女平等の推進の観点から、子どものジェンダー意識の形成要因に関心が向けられている。それは非常に多岐にわたるが、住んでいる地域において、有形ないしは無形のジェンダー慣行をどれほど目の当たりにするかも重要な観察ポイントだ。


内閣府の『地域における女性活躍・男女共同参画に関する調査』(2024年度)では、18~39歳の対象者に対し、中学校卒業時点で住んでいた地域(県)において、旧態依然のジェンダー慣行がどれほどあったかを尋ねている。以下の9つだ。

①地域や親戚の集まりでの食事の準備やお茶出しは女性の仕事
②自治会などの重要な役職は男性の仕事
③正社員は男性、女性は非正規社員
④職場でのお茶出しや事務などのサポート業務は女性の仕事
⑤子供が生まれたら、女性は仕事を控えめにした方がよい
⑥男性が前に立って、女性は後ろで支えるべき
⑦家を継ぐのは男性がよい
⑧家事・育児・介護は女性の仕事
⑨個人の価値観よりも世間体が大事

①について、「よくあった」「時々あった」と答えた人の割合は、東京出身者では18.7%だが、鹿児島出身者では36.0%となっている。倍の開きだ。他の設問についても、中卒時に住んでいた県(出身県)による差が見受けられる。

9つの設問への回答を合成して、ジェンダー強度を測る尺度を作ってみる。「よくあった」には5点、「時々あった」には4点、「わからない」には3点、「あまりなかった」には2点、「全くなかった」には1点のスコアを付ける。この場合、対象者が経験したジェンダー慣行の強さは、9~45点のスコアで測られる。

対象者を出身県で分け、このスコアの平均点を算出し、47都道府県の数値を高い順に並べると<表1>のようになる。

newsweekjp20250709005830.png

各県の出身者が、子ども期に経験したジェンダー慣行の強さだ。最も低いのは東京で、おおよそ都市部で値が低い傾向にある。若い住民が比較的多いためかもしれない。大学等の高等教育機関が多く、啓発の度合いが高いことも考えられる。だが、都市化のレベルだけで解釈できるような単純な構造でもない。各県の男女平等施策が関与している可能性もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

金正恩氏が列車で北京へ出発、3日に式典出席 韓国メ

ワールド

欧州委員長搭乗機でGPS使えず、ロシアの電波妨害か

ワールド

ガザ市で一段と戦車進める、イスラエル軍 空爆や砲撃

ワールド

ウクライナ元国会議長殺害、ロシアが関与と警察長官 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 10
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中