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世界経済

ポスト・ドルの時代へ...アジアと欧州が築く「もう一つの世界秩序」

SAVING WORLD ECONOMY SANS US

2025年7月2日(水)16時03分
魏尚進(ウエイ・シャンチン、コロンビア大学経営大学院教授、元アジア開発銀行チーフエコノミスト)

国際金融の分野でも、1国の無責任な振る舞いに左右されない、より安定した国際的枠組みが求められる。目指すべきは、世界の支配的な通貨としてのドルの代替ではなく、リスクを管理・分散し経済の安定性を高める手段を提供することだ。

例えばユーロまたはアジア通貨に連動するステーブルコイン(価値が安定したデジタル通貨)や、米ドルに依存しない通貨スワップ協定のネットワーク形成だ。欧州投資銀行とアジア開発銀行などが連携すれば低所得国向けの、より強固な多国間債務救済の枠組みを構築することも可能だろう。


各地域内の国々がさまざまな問題で緊張関係にあることを考えれば、これらの解決策の実現は簡単ではない。協力するには課題を切り分け、各国政府が「グローバルな公共財」の提供に専念する必要がある。困難に思えるかもしれないが、そうしなかった場合にアジアや欧州、さらには世界に降りかかるコストはずっと大きいだろう。

©Project Syndicate


newsweekjp20241008020832-2ea65f7bb3aaabffc87324375bcb02c28ae9723b.jpg魏尚進(ウエイ・シャンチン)
SHANG-JIN WEI
コロンビア大学経営大学院教授(金融学・経済学)。アジア開発銀行(ADB)でチーフエコノミスト、世界銀行では汚職対策の政策・研究のアドバイザーなどを歴任した。

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