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職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳女性、会社が裁判でとんでもない主張を...

2025年7月2日(水)11時25分
印南敦史(作家、書評家)

社員と家族はどう対応すべきかを細かく解説


 名古屋高裁が遺族側勝訴の判決を下した背景の一つには、母、佳子さんが集めた綾奈さんのツイートがあると考えられる。綾奈さんは自身のツイッターアカウントを持っており、そこで趣味や日常生活についてツイートしていた。綾奈さんの死後、ツイッターのアカウントを発見した桂子さんは、綾奈さんが精神的に追い込められるにつれて、悲観的な内容のツイートが見られたり、ツイート数そのものが減少していることに注目し、それをグラフにして裁判所に提出している。裁判所は提出された綾奈さんのツイッターの履歴を踏まえて、綾奈さんが亡くなる直前の2012年6月中旬にはうつ病を発症していたと認定した。(48ページより)

会社は高裁判決を不服として上告するが、2018年に最高裁が棄却。遺族の勝訴が確定する。ここにきてようやく、遺族側が工夫した証拠収集が功を奏したわけだ。

だがそれは、ここまでしないと社員にとっての真実が明らかにされないということであるとも解釈できる。

だいいち、この会社はい今なお健在なのである。そんなところにも、理不尽極まりない不公平感が見える。ちなみに採用情報というページを確認してみたところ、「自由な社風で楽しく仕事ができます」と書かれていたので、表現しようのない恐ろしさすら感じた。

なお冒頭で触れたとおり、このケースは多くの会社の内部に数ある問題のひとつにすぎない。だが著者は、さまざまな事情に社員とその家族側がどう対処すべきかについても細かく解説している。

会社によって自分や家族、近親者などを失ってしまった人、あるいは今まさに会社に殺されかけている人などは、ぜひとも参考にしていただきたいと思う。

newsweekjp20250701140049.png会社は社員を二度殺す――過労死問題の闇に迫る
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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。最新刊は『現代人のための 読書入門』(光文社新書)。

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