最新記事
チベット問題

ダライ・ラマ14世が「後継者」を語る日がついに...中国やチベットはどう出る? 転生制度の未来は?

2025年7月1日(火)14時25分
楢橋広基(本誌記者)

中国が立てる偽ダライ・ラマ15世に対しての反応は

中国政府が「偽ダライ・ラマ15世」を立てても、「チベット自治区内に住むチベット人を含め、ほとんどのチベット人は信じないだろう」と大川教授は指摘する。

中国が擁立したパンチェン・ラマ11世(ノルブ)は、中国共産党のプロパガンダも虚しくほとんど信仰されていないため、偽ダライ・ラマ15世も信仰されない可能性が高いだろうとのことだ。


チベット亡命政府も偽ダライ・ラマ15世を認める気はない。チベット亡命政府のペンパ・ツェリン首相は6月4日、東京で行われた第9回世界チベット議員連盟会議の記者会見で「ダライ・ラマ転生制度は、無宗教を標榜する中国共産党が安易に関与すべきではない。チベット仏教信者によって運用されるべきだ」と主張した。

そして、「中国政府は偽物のダライ・ラマ15世を立てる前に、毛沢東や鄧小平の転生者を探すべきではないか」というダライ・ラマ14世が飛ばしたジョークを紹介した。

もちろん、国際社会も中国が立てる偽ダライ・ラマ15世を認めない構えだ。

2020年、第1次トランプ米政権下で成立したチベット政策支援法では、「ダライ・ラマなどチベット仏教指導者の転生はチベット仏教徒自身によって行われるべきであり、中国政府による干渉を許さない」 と定めており、中国政府関係者が転生制度に干渉する場合、「制裁対象になる可能性がある」としている。

EUでも今年5月、欧州議会がダライ・ラマを含むチベット仏教の精神的指導者の選出への介入を非難することを含んだ決議を採択。その上で、チベットにおける人権侵害に関与する当局者および団体に制裁を課すようEUに要請した。

とはいえ、大川教授は「問題解決になるような具体的なアクションは期待できない」と、チベット問題解決の難しさを指摘する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は3日ぶり反落 最高値更新後に利益確定 方

ビジネス

アングル:米中の関税停止延長、Xマス商戦の仕入れ間

ビジネス

訂正-午後3時のドルは147円後半でもみ合い、ボラ

ビジネス

ソフトバンクG、不振のインテルに20億ドル出資 米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 9
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 10
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中