「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊した氷河崩壊、専門家が警告する真の原因とは?
支援金が集まり、復興作業開始
今回の災害に対し、スイス連邦政府が、ブラッテンに約8億9千万円(500万フラン)の復興支援を提供するほか、様々な自治体も支援金を送ることを決めた。ほかにも、人道援助団体のカリタス・スイスとスイス赤十字社が共同で7千万円を超える(40万フラン)の資金を提供するなど、国内では被災者たちを助ける動きが広まっている。
建物のがれきなど大がかりな撤去・排水作業は、災害発生から2週間半経った6月13日から始まった。村では、すでに復興計画が立てられ、村民たちに伝えられた。整備作業は2026年も続き、2027年には現在の場所から少し離れたエリアに村の中心部を作る予定だ。2030年までには、住民が生まれ変わったブラッテンで再び生活できるようにしたいという。だが、数年で完全に元通りになるのかどうかはわからないともいわれている。
たとえば、スイス南東部のボンド村では2017年に大規模な土砂崩れが発生したが、被害を受けた流れ込み式の水力発電所は災害から約8年後の、今年5月になってようやく発電を再開した。
「気候変動だけが原因ではない」
ブラッテンの土砂崩れは、スイスでは前代未聞のケースだと報じられている。これまでに国内で起きた大規模な地滑りとは違い、落石による氷河の崩壊「落石+氷河」だからだ。筆者は以前の記事で、気候変動による氷河の融解にふれた。今回のケースは、気候変動の影響が強いと考える人は多いはずだ。ところが、専門家たちによると、今回の土砂崩れに気候変動は関係しているものの、原因は気候変動だけではないという。
スイス連邦工科大学チューリヒ校のマティアス・フス氏(氷河学者)は、山の浸食は地質学的プロセスであり、このような地滑りは人類が誕生するずっと前から起きていたと語っている。今回、落石は氷河とは無関係で発生し、岩が氷河の上ではなく他の場所に落下していたら、おそらく岩はそのまま留まっていただろうと説明している。フス氏は、アルプス自体は危険な場所ではなく、基本的にアルプスで暮らすことは可能だと言う。ただし、このような予想外の大規模な災害は、今後頻繁に起こると警告する。大切なのは"監視"とのことだ。