最新記事
考古学

古代エジプト神話に潜む「天の川の暗黒帯」...新発見が示す宇宙と神話の意外な関係

Milky Way's 'Dark River' Discovered in Ancient Egyptian Art

2025年6月6日(金)16時10分
イアン・ランドール

グレート・リフトが描かれたヌトは実は珍しい?

似たような表現はエジプト・ルクソールにある王家の谷にある4つの墓でも確認されている。

「例えば、王家の谷の中にあるラムセス6世の墓では、埋葬室の天井が『昼の書』と『夜の書』によって分かれている」とグラウルは指摘した。

「『昼の書』『夜の書』どちらの部分にも、背中合わせに配置されたアーチ状のヌトの姿が描かれ、その頭部から出て背中全体を通って臀部に至るまで、厚く金色の波打つ曲線によって分けられている」


今回の研究でグラウルが特に強調しているのは、ヌトと天の川が必ずしも同一ではないという点だ。グラウルは過去の論文で、『ピラミッド文書』『棺の書』『ヌトの書』といった古代エジプトの宗教関連の文献記述と、当時の夜空を再現した天文シミュレーションを比較した。そして、「他のヌトの描写では、このような波打つ曲線を私は確認していない」と指摘した。

「この曲線が非常に稀であることは、私が昨年の研究で導き出した、ヌトと天の川との間にはつながりはあるが同一ではないという結論を補強するものと私は考える」

今回の「暗黒の曲線」も、あくまでヌトの身体に現れる天文現象のひとつであり、ヌトと天の川が完全に同じわけではないという考えを補強するものとなった。

古代エジプト人は、夜空に現れる光と闇のパターンを単なる自然現象としてではなく、神々の働きや死後の世界の構造と結びつけて解釈していたのだ。

【参考文献】
Graur, O. (2024). The ancient Egyptian personification of the Milky Way as the sky-goddess Nut: An astronomical and cross-cultural analysis. Journal of Astronomical History and Heritage, 27(1), 28-45.

Graur, O. (2025). The ancient Egyptian cosmological vignette: First visual evidence of the Milky Way and trends in coffin depictions of the sky goddess Nut. Journal of Astronomical History and Heritage, 28(1), 97-124

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 

ワールド

米国防総省、パランティアのAIを指揮統制システムに

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    「嘘でしょ!」空港で「まさかの持ち物」を武器と勘…
  • 8
    将来のアルツハイマー病を予言する「4種の先行疾患」…
  • 9
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 8
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中