「兵器は増やせても、人が足りない」...ヨーロッパの防衛産業を襲う人材危機

チェコで働くパベル・チェシャル氏は、勤め先であるミサイルやドローンのエンジンを扱う企業がビジネスを倍に増やすことは十分に可能だと考えている。しかし、それは人材を確保できればの話だ。チェコ・ベルカビテシュのPBS社の工場で6日撮影(2025年 ロイター/Eva Korinkova)
チェコで働くパベル・チェシャル氏は、勤め先であるミサイルやドローンのエンジンを扱う企業がビジネスを倍に増やすことは十分に可能だと考えている。しかし、それは人材を確保できればの話だ。
欧州の多くの防衛関連企業も同じ悩みを抱えている。トランプ米大統領が欧州に対し、米国に過度に依存しないよう警告したことを受け、欧州各国の政府は弾薬、戦車、その他の兵器への支出を増額している。
チェシャル氏はチェコのPBSグループの事業担当副社長だ。プラハから車で2時間のベルカビテシュにある同社の生産施設では、約800人が勤務している。同氏はさらなる人材を探している。
「市場に人材さえいればすぐに雇うだろう。受け入れるためのビジネスはあるのだから」
同社は昨年賃金を8%引き上げ、2025年にはさらに10%引き上げて優秀な人材を確保したい考えだ。
欧州連合(EU)による8000億ユーロ(約130兆円)規模の防衛投資策は、今後10年間で数十万人の雇用を創出すると見込まれるが、専門技能を持つAIエンジニア、データサイエンティスト、溶接工、機械工といった人材は不足している。
ロイターが取材した10以上の企業、人材紹介会社、労働者らによると、企業は賃金と福利厚生などの待遇を引き上げ、他社から人材を引き抜き、地元の学生や学校にアプローチするなど、さまざまな方法で人材を確保しようとしている。
PBSグループは自社の訓練学校を設立し、自ら人材を育てている。同社の製造拠点の責任者、ミラン・マチョラン氏は、「学校や大学と協力するだけでなく、自社の訓練学校で人材を育てている」と語った。