歴史が警告する関税の罠──トランプ政策が招く「世界恐慌」の再来

A LESSON IN HISTORY

2025年5月22日(木)16時55分
スコット・レイノルズ・ネルソン(米ジョージア大学歴史学部教授)

例えば、航空機部品大手のハウメット・エアロスペースは、4月上旬の時点で不可抗力事由(契約当事者では対処できない予測不可能な外部事情により義務が履行できない状態)を宣言。

トランプ関税の影響を受ける場合、一部の出荷を停止する可能性をちらつかせた。ほかにもさまざまなセクターで多くの企業、特に中国と取引している企業が契約を放棄する可能性が高い。

彼らが撤退を検討している取引の多くは主に銀行、ヘッジファンド、保険会社など金融機関からの融資で資金を賄っている。融資の一部は証券化され、他の無数の投資家に売却される。

株式市場の損失吸収力は非常に柔軟性があるが、2008年の世界金融危機の際のように、はるかに大規模でかなり複雑な金融市場は別だ。08年、FRB(米連邦準備理事会)は市場への流動性供給のため金融機関の不良債権を買い取った。


筆者は一介の歴史家にすぎないが、これまで目にしてきた混乱にFRBはうまく対処できると信じている。とはいえ、まだ米中貿易凍結の余波に対処しなければならない。90日間の猶予後に何が続くかも不明のままだ。

米議会が関税に対する憲法上の管轄権を再び主張できず、1830年代のジャクソンのように、アメリカの貿易の実権をたった1人の人間が握っているとしたら、迫り来る世界恐慌に伴う流動性崩壊に耐え得る中央銀行などないだろう。

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