最新記事
韓国大統領選

韓国大統領選、保守王国でもイ・ジェミョン猛追 討論会で勝利したのは知日派の意外な候補

2025年5月21日(水)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ほぼ無名のクォン候補が存在感示す

議論は黄色封筒法(労働組合の団体交渉権保護法)や脱原発政策など様々なテーマに及び、キム候補がイ・ジェミョン候補を「親中・反米」と批判するなど激しい応酬が交わされた。

しかし、討論会後にネットでのリアルタイムキーワード検索で最も注目を集めたのは、ほぼ無名に近かった民主労働党のクォン・ヨングク(權英國)候補だった。「進歩派の大統領」を掲げるクォン候補は、キム・ムンス候補を「尹錫悦の代理人」と厳しく批判し、「ユン・ソンニョルのために行われる選挙なのに、何の資格でここに出てきたのか」と鋭く質問。また、イ・ジェミョン候補に対しては差別禁止法についての明確な立場表明を求めるなど、鋭い発言で討論会を席巻し存在感を示した。

そして討論会終了後に驚くことが起きた。他の候補者たちが互いに握手を交わすなか、クォン候補はキム候補が求めた握手を拒否し、代わりに両手を胸の前で合わせる「合掌」のポーズを取った。後日ラジオ番組でクォン候補は、「(ユン政権の問題についてキム候補が国民に)謝罪しないのに握手をすることが、相手を認めたという印象を与えると思った」と説明している。この一連の行動も選挙戦に新たな話題を提供した。

クォン候補は鉱夫の息子として生まれ、浦項工科大学とソウル大学金属工学科を卒業後、豊山グループで働いていたが、同僚の労働災害死に抗議して解雇された経歴をもつ。その後、日本の徳島大学への留学を経て司法試験に合格。労働者を弁護する「街の弁護士」として活動し、民主労総法律院長なども務めてきた。

討論会以降、クォン候補を擁する民主労働党によると806人から約6200万ウォン(約650万円)の寄付金が寄せられ、「あなたが描く世界に私が見えました」「差別禁止法を語るクォン・ヨングク候補を支持します」などの応援メッセージが数多く届いたという。

保守系候補の一本化は実現するか

テレビ討論会で激しく対立した各候補だが、選挙戦終盤の変数として、キム候補とイ・ジュンソク候補による保守系候補の一本化の可能性も浮上している。キム候補は「イ・ジュンソク候補と私たちはまったく違うところがない」と述べ、一本化への意欲を示しているが、イ・ジュンソク候補は「一本化の手続きや過程自体が非常に旧態依然に見える」として否定的な立場を取り続けている。

25日には投票用紙の印刷が始まるため、一本化が実現するとすれば今週中に交渉に進展がなければならないと見られている。政界では、現在は立場の違いが明確だが、今後変化の可能性もあるとの観測も出ている。

次のテレビ討論会は23日に「社会」をテーマにKBSイ·ユンヒ記者の司会で、27日には「政治」をテーマにMBCチョン·ジョンファン・アナウンサーの司会で行われる予定だ。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハマス、新たに人質1人の遺体を引き渡し 攻撃続き停

ワールド

トランプ氏、米国に違法薬物密輸なら「攻撃対象」 コ

ビジネス

米経済、来年は「低インフレ下で成長」=ベセント財務

ビジネス

トランプ氏、次期FRB議長にハセット氏指名の可能性
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止まらない
  • 4
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中