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「ドル体制」崩壊もあり得る? 「基軸通貨ドル」不要論は間違い...本当に恩恵を受けてきたのは誰なのか?

COLLAPSE OF THE GLOBAL DOLLAR?

2025年5月20日(火)14時48分
アンドレス・ベラスコ(元チリ財務相)

世界中の人が所有したがるドルは特別だ。FRB(米連邦準備理事会)の試算によれば、国外で保有されるドルは1兆ドル超。アメリカは世界からシニョリッジを得ており、低コストで資金を調達できるのだ。

アメリカ人が外国でホテル代をドルで支払ったとしよう。1年後にホテル経営者がそのドルを使ってアメリカを訪れたとき、アメリカの物価が上昇していれば、アメリカはマイナス金利の融資を受けたことになる。


たとえ米国債の利回りが低くても、外国人は喜んで米国債を保有し続ける。今年3月時点で外国人が保有する米国債は約9兆ドル。担保としての役割があることで米国債の金利が0.5%低くなるとしたら、アメリカは年間450億ドルも節約していることになる。

利回りが経済成長率を下回っていれば、アメリカは借金をせずに「ただ飯」を食べられるようなものだ。

ではアメリカの利益は他国の損失になるのか。そんなことはない。外国人は、安全なドル建て資産で貯蓄や投資を行うことで利益を得ている。同じサービスを提供できる経済はほかにない。

欧州が候補ではあるが、EU(欧州連合)が共同名義の債権を発行し始めたのは最近のことだ。中国も経済規模は大きいものの、人民元建ての資産に人気が出ることはないだろう。

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