「急がないEU」と「進めたいアメリカ」...米英スピード合意の陰で取り残される?
ドイツの化学品流通大手ブレンタグのクリスチャン・コールパイントナー最高経営責任者(CEO)は14日の決算発表後の電話会見で、EUが交渉を「非常に賢明に」進めていると述べた。ただ、「(関税上乗せ部分の)90日間の猶予は、いわば鎮静剤のようなものだ。市場の先行きに明確な展望を開くような真の治療法ではない」と苦言を呈した。
スイスのIMDビジネススクールで地政学および戦略を教えるサイモン・イブネット教授は、米英間の協定と米中間の休戦から全般的な10%関税と特定分野での25%関税が基本線となることが読み取れると指摘。米金融市場の反応によってトランプ氏は上乗せ関税の90日間停止と対中休戦の受け入れに動いており、市場動向が米政府の暴走を抑制する可能性があるとの見方を示した。米EU間の貿易・投資額は年間9兆5000億ドルにのぼるだけに、この点は米EUの貿易戦争突入という展開の歯止めになるかもしれない。
ただイブネット氏は今後の米EU間の話し合いの見通しについて「交渉は困難を伴い、長期戦となる公算が大きい。最終的に行き詰まり、EUが高い関税を受け続ける恐れもある」と慎重な見方を示した。


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