「急がないEU」と「進めたいアメリカ」...米英スピード合意の陰で取り残される?
その後、トランプ氏はフォンデアライエン氏を「素晴らしい」と称賛し、「会談できることを願っている」と述べた。これに対してフォンデアライエン氏は「ホワイトハウスに行くなら、議論できるパッケージを持っていきたい」と応じた。この発言は、包括的な貿易協定に向けた交渉を望み、米英間で締結されたような、短期間で政治的な成果を狙った、範囲の限られた取引では満足しないというEUの姿勢を示している。
厳しい交渉
米国の統計によると、EUと米国の貿易額は米英間の6倍余りにのぼり、欧州側はこの通商規模が交渉において有利な要因として働くと考えている。
リトアニアのシャジュス財務相はEU財務相会合の期間中、ロイターに「EUが(通商協定で)他国のひな型を採用しなければならなくなるとは、とても思えない」と語った。
一方、シンクタンクのユーロインテリジェンスのアナリストグループは、交渉が単なる貿易の枠を超える可能性に備えるべきだと指摘。「EUがこの分野で前進したいなら、アプローチを考え直す必要があるかもしれない。シェフチョコビッチ氏は貿易の極めて狭い範囲しか語れない。規制障壁の緩和を約束することさえできない」とした。米政府当局者は、EUが付加価値税(VAT)や自動車・食品の安全規制といった非関税障壁を緩和する必要があると主張している。
トランプ氏はVATを貿易障壁と呼んでいたが、米国は英国との協定ではこの点に触れなかったようだ。英国も米国から批判を浴びていたデジタルサービス税や牛肉輸入に関する食品基準で譲歩しなかった。
これまでのところ米国とEUの交渉は難航している。