最新記事
EU

「急がないEU」と「進めたいアメリカ」...米英スピード合意の陰で取り残される?

2025年5月15日(木)14時47分
フォンデアライエン欧州委員会委員長とトランプ米大統領

5月12日、ベセント米財務長官はスイスのジュネーブで開いた記者会見で、米国との貿易交渉でスイスと英国が最前列に躍り出た一方、欧州連合(EU)は「はるかに遅れている」とEUの姿勢に苦言を呈した。写真は、フォンデアライエン欧州委員会委員長とトランプ米大統領。2020年1月、ダボスで撮影(2025年 ロイター/Jonathan Ernst)

ベセント米財務長官は12日にスイスのジュネーブで開いた記者会見で、米国との貿易交渉でスイスと英国が最前列に躍り出た一方、欧州連合(EU)は「はるかに遅れている」とEUの姿勢に苦言を呈した。しかしそれほど心配していないというのがEU欧州委員会側の立場だ。

EUは、貿易面では世界三大経済圏の1つであるという規模そのものが優位に働くと確信している。複数のEU高官は、他国に振り回されることなく、英国が締結した協定よりも良い条件を米国に求める方針だと語った。


 

しかし時間は限られている。焦点となっているのは1兆7000億ドル(約250兆円)規模の対米貿易であり、EUは米国の「相互関税」のうち7月まで一時停止されている上乗せ分が再発動される事態や、米国との全面的な貿易戦争への突入については、回避を望んでいる。

欧州委員会で対米交渉を担うシェフチョビッチ委員(貿易・経済安全保障担当)は先週、「われわれは弱い立場に立たされているとは感じていない。不公平な合意を受け入れるような圧力も感じてはいない」と強気の姿勢を示した。

シェフチョコビッチ氏の発言はベセント長官がジュネーブでEUの交渉姿勢に不満を示す前だった。このジュネーブでの交渉で米中は互いに輸入品への追加関税を100%余り引き下げることで合意し、貿易戦争入りにブレーキをかけたが、それでも欧州委の姿勢に変わりはない。

EUの通商当局者によると、今回の対米交渉はトランプ米大統領が掲げる貿易政策の目的が理解しにくいという難題を伴っている。

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は1月のトランプ氏の大統領就任以来、正式な会談を行えておらず、前ローマ教皇フランシスコのバチカンでの葬儀の場で短く言葉を交わしただけだ。

BAT
「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世界の構築を共に
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRBの金融政策「適切」、労働市場巡るリスクを警告

ビジネス

FRBの独立性に対する脅威は「非常に深刻」=英中銀

ビジネス

英財務相、11月26日に年次予算発表 財政を「厳し

ワールド

金総書記、韓国国会議長と握手 中国の抗日戦勝記念式
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中