最新記事
荒川河畔の「原住民」(29)

アルミ缶買い取り体験記...トランプ関税がホームレスの生活にも影響

2025年5月13日(火)18時15分
文・写真:趙海成

買取品目が多く、少量でも歓迎だというリサイクルセンター

買取品目が多く、少量でも歓迎だというリサイクルセンター

15キロのアルミ缶、2~3日生きるのにギリギリ

予定通り、45分で目的地に到着した。道路の角に位置しているリサイクルセンターで、大きな看板が非常に目立つため、遠くからでもすぐに分かった。

自転車を押しながら入り、合計3袋のアルミ缶を降ろすと、工場から責任者らしき若い男性が出てきた。互いに挨拶を交わす。私たちは、アルミ缶を作業場の圧縮機のそばに移動させるよう指示された。

私たちは2回に分け、アルミ缶を圧縮機に入れた。すると工場の人がシャベルのような道具を持ってきて、鉄製のトレイの中のアルミ缶をかき回し始めた。後で知ったのだが、アルミ缶の中にスチール缶が混ざっている場合には、その道具の磁石に引き寄せられて選り分けることができるのだ。

その後、圧縮機のスイッチが押され、アルミ缶を押しつぶした。

アルミ缶の袋を自転車から降ろす様子

アルミ缶の袋を自転車から降ろす様子

工場にはもう1人若い作業員がいて、電子レンジぐらいの大きさに圧縮された2つのアルミブロックをはかりに載せ、重量を測定していく。

総重量は15キログラムだった。その日の相場はアルミ缶1キロにつき255円で、15キロだと3825円になる。それに383円の消費税が加算され、現金として4208円を得ることができた。

リサイクルセンターの人の話では、アメリカのトランプ大統領が始めた関税戦争の影響でアルミの価格が下落したのだという。関税戦争前はアルミ缶1キロにつき約300円だったそうだが、現在は255円である。

宇海くんはそれから、時間と「給料」を計算した。アルミ缶を集めるのに2時間、洗って潰すのに1時間。リサイクルセンターまで缶を運び、現金に交換するのに往復2時間。合わせて5時間で4208円を稼いだ。2日間か3日間の生計を立てるにはぎりぎりである。

彼はこれから、缶の仕事を続けつつ、同時に他のアルバイトを探すつもりだという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米英貿易協定を批判 英供給網から排除される可

ワールド

米エヌビディアとAMD、サウジ政府系ファンドのAI

ワールド

イラン、16日に欧州諸国と核協議 イスタンブールで

ワールド

独仏、ロシアが停戦拒否なら制裁強化と警告 エネルギ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 3
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」にネット騒然
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 6
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 7
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 8
    「奇妙すぎる」「何のため?」ミステリーサークルに…
  • 9
    トランプは勝ったつもりでいるが...米ウ鉱物資源協定…
  • 10
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中