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荒川河畔の「原住民」(29)

アルミ缶買い取り体験記...トランプ関税がホームレスの生活にも影響

2025年5月13日(火)18時15分
文・写真:趙海成
ホームレス男性

リサイクルセンターにアルミ缶を売りに行く新人ホームレスの宇海くん(仮名)

<多くのホームレスにとって、アルミ缶を運び、お金に換えるという仕事はなくてはならないもの。在日中国人ジャーナリストの趙海成氏は、新人のホームレスと一緒にリサイクルセンターに空き缶を売りに行った。連載ルポ第29話>

ホームレスの新人である宇海くん(仮名)は、師匠である征一郎さんの指導を受け、すでに缶の仕事を始めている。

2週間前、彼のテントを訪れた際に、多くのアルミ缶が積まれていたのを見た。私は言った。

「リサイクルセンター(リサイクル業者)へ売りに行くときに同行していいですか。私もアルミ缶がどのようにお金に換わるのかを見て、体験したいんです」

4月のある晴天の朝、宇海くんが住む荒川上流へ自転車を走らせた。橋脚に到着すると、彼の自転車の後ろにはすでに、アルミ缶がいっぱいに入った2つの大きな袋が結びつけられていた。

もう1袋は地面に置かれていて、言うまでもなく、私の自転車に載せられるのを待っていた。

私の挨拶の声を聞いた宇海くんはテントから出てきて、「このアルミ缶の袋は軽いと思います」と、教えてくれた。

「大丈夫、心配ありません。今日は初めて体験することが目的なので、あるだけ運びますよ」と私は言った。

宇海くんはすでに征一郎さんから、集めた空き缶を持ち込むリサイクルセンターをいくつか教えてもらっていた。今日行くのは、その中で最も近いリサイクルセンターだ。自転車で45分ほどで到着できるという。

午前10時にテントを出発し、私は宇海くんの後ろをついて行った。私たちの自転車の後ろには、アルミ缶でいっぱいの大きな袋が結び付けられている。

並んで走ると、他の人の邪魔になるから注意が必要だ。特に橋を渡るときは、歩道が狭く、対向の自転車とぶつかりやすいので気をつけなければならなかった。

それでも、宇海くんが運んでいた2袋のアルミ缶は、危うく2回も落ちそうになった。そのたびに自転車を停め、再び固定しながらリサイクルセンターへ向かった。

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