トランプも恐れる「厄介な事態」に?...イスラエル・トルコが虎視眈々と狙う「新生シリア」で何が起きるのか

ALLIES COLLIDE: WHAT NEXT?

2025年4月23日(水)14時32分
トム・オコナー(外交担当副編集長)

トルコのエルドアン大統領

MURAD SEZER-REUTERS

アメリカはクルド人主導のシリア民主軍(SDF)を支援するためシリア北東部と、主に自由シリア軍(FSA)が支配下に置くシリア南部の砂漠の駐屯地に約2000人の兵士を派遣してきた。

そのシリアで2つの同盟国が戦火を交えれば、トランプの恐れる「厄介な事態」になる。トランプは外国の紛争への米軍派遣をできるだけ避けたい考えで、シリア駐留米軍の撤収も何度もほのめかしてきた。

新生シリアが分裂する懸念も

イスラエルとトルコ双方にとって、シリアは国境を接する国であり、長く混乱が続いていたことも手伝い、双方の核心的な利益と切り離せない。

2011年から内戦が続いていたシリアは、23年10月のガザ戦争勃発を契機に、より広範な戦いであるイスラエル対イラン主導の「抵抗の枢軸」の戦いに巻き込まれた。

昨年11月、イスラエルが近隣のレバノンにおける激戦を経て、同国のイスラム教シーア派組織ヒズボラと停戦協定を結んだまさにその日、一見静まり返っていたシリア国内の前線でいきなり戦闘が勃発。イスラム系組織シャーム解放機構(HTS)が即座に主要都市を制圧した。

その後2週間足らずで、HTSは首都ダマスカスに進撃、親子2代で半世紀余りに及んだアサド政権の支配はあっけなく崩れ去った。内戦終結でシリアにようやく平和が訪れると期待されたが、希望はすぐに不安に変わった。

HTSの指導者アフマド・アッシャラア(別名モハマド・ジャウラニ)は過去には国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)とも関係していた。

そんな人物が率いる暫定政権の統治の方向性は不透明で、近隣の大国の思惑も読めず、新生シリアの未来には不確定要因が多すぎたからだ。

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