欧州がトランプから「2000億ドル分の武器」を買えば解決?...ウクライナ支援を「美味しい取引」に持ち込む方法

Make a Deal!

2025年3月11日(火)12時00分
バート・シェフチェク(パリ政治学学院非常勤教授)

ただし、小切手外交で米欧の協力関係を「買う」ことは、アメリカが同盟関係に利点を見いださなくなった世界に、ヨーロッパが適応する方法の1つにすぎない。もう1つの方法は、独自の影響力と圧力を生み出すことだ。

例えば、ヨーロッパとアメリカは最も頼りになるパートナーだという確立された規範がある。トランプがロシアとウクライナに関連してこの規範を破れば、ヨーロッパは中国など重要な問題についてもアメリカとの協調関係を弱めざるを得ないかもしれない。


ヨーロッパの対中政策は、ジョー・バイデン前米大統領の時代にアメリカの政策と歩調を合わせるようになった。その背景には、ヨーロッパが中国への過剰な依存のリスクを回避したいという利点もあったが、アメリカの説得に応じて米欧の亀裂を防ぎたいと考えたことも大きい。

トランプ陣営があまりに厳しい取引を迫れば、EUはバイデン前政権の要請で中断した中国との投資協定の交渉を再開するかもしれない。新しい貿易・技術協議会を発足させることも考えられる。

もちろん、トランプがヨーロッパよりロシアとの取引を優先するなら、全ては机上の空論になる。

その結果、ウクライナは崩壊し、NATOは瓦解する可能性が高い。フランスとドイツは現政権であれ、ロシアとアメリカの選挙干渉に助けられて誕生する右派政権であれ、ロシアの要求を受け入れる方向に傾くだろう。

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