最新記事
日本社会

東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教育機会の格差

2025年2月26日(水)11時45分
舞田敏彦(教育社会学者)
東大赤門

地方出身の女子学生にとって東京大学は文字通り「狭き門」 morit/photoAC

<東京の男子学生が東大に入る確率は「77人に1人」だが地方の女子では「1174人に1人」>

大学入試の合格発表の時期だが、わが子の快挙を喜ぶのも束の間、費用負担の心配が頭をもたげてくる。入学金に加え、都会での下宿費を負担させられる家庭も地方では多い。所得水準が低い地方の家庭にとって、「学費+下宿費」のダブルの負担は重い。

こういう問題が認識されているからか、最近では下宿生の家賃補助を行う大学も出てきている。先駆けは東京大学で、2017年度より女子学生の家賃補助を実施している。最長2年間、大学が提携している賃貸住宅や寮の家賃を、月額3万円までの範囲で補助する、というものだ。利用枠に制限はあるものの、地方の優秀な女子を呼び寄せるのに一役買っている。


東大という最高学府で女子学生が少ないことはよく知られているが、地方出身の女子となると、さらに少なくなる。2021年5月時点の統計によると、東大の学部学生は1万4033人で、うち女子は2768人。女子の割合は19.7%と2割にも満たない。

同年度の『東大学生生活実態調査』を見ると、学部の女子学生のうち東京・関東以外の高校出身者の割合は41.3%。これを女子学生の全数(2768人)にかけると、地方出身の女子学生は1143人と見積もられる。全学生の8.1%でしかない。

性別と出身地域に依拠して6つのグループを設定し、学生数の内訳を見ると<表1>のようになる。高校生(300万8172人)と東大生(1万4033人)の比較だ。

newsweekjp20250226015733-b894953f55e06ea750e04223155e97d9fb519769.png

高校生と東大生の組成はかなり違っている。東大では女子が少ない。高校生では男女半々だが、東大生では「男子4:女子1」だ。

地方出身の女子(赤色)に注目すると、高校生では33.5%なのに、東大生では8.1%しかない。地方の女子から東大生が出るチャンスは、通常の期待値の4分の1にとどまっている。対して、東京居住の男子だと期待値の3.7倍もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反落、企業や経済への関税影響を懸念

ビジネス

米経済は景気後退に陥らず、FRBは26年に利下げ=

ワールド

ウクライナ首相、米財務長官と会談 復興投資基金巡り

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、調整局面続く FRB人事も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「原子力事…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    永久欠番「51」ユニフォーム姿のファンたちが...「野…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 10
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 7
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 8
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中