「2国家解決」で歴史に名を残したい、2人の思惑が合致するとき...サウジの「外交Xデー」はあるのか?

HOUSE OF CARDS

2025年1月16日(木)15時52分
トム・オコナー(外交問題担当副編集長)

newsweekjp20250116025118-1cd5c0caaf0d3aad7f704f166282d5112ca7f96e.jpg

サウジは対外関係を多様化させている。アメリカが仲介したアブラハム合意の署名式(20年9月) AP/AFLO


楽観論と悲観論のはざまで

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが、23年10月7日にイスラエルに奇襲を仕掛けたことに起因する戦争は、従来のアメリカの中東政策を根底から揺さぶっている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ガザで執拗なまでにハマス掃討作戦を続けている。しかし連立政権の一角を担う極右勢力は、ガザと並ぶパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸の併合も要求している。

つまりネタニヤフはパレスチナに国家の地位を与えるどころか、パレスチナ自治区をなきものにする圧力にさらされている。

これについてサウジは02年、ヨルダン川西岸にパレスチナ国家が樹立されることを条件に、アラブ諸国がイスラエルとの関係を正常化する「アラブ和平イニシアチブ」を提唱。今もこれを中東和平の基本方針としている(イスラエルは同イニシアチブを拒絶している)。

第2次トランプ政権がこの問題にどう対処するかは、まだ分からない。ただしアンサリによると、サウジでは「楽観論と悲観論の両方が聞かれる」という。

「楽観論の根拠は、トランプが第1次政権でサウジと経済協力拡大など良好な関係を維持したことだ。一方で悲観論は、トランプが駐イスラエル大使にマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事を指名するなど、極めてイスラエル寄りの人事を次々と発表していることによる」

トランプは第1次政権でサウジとその王室、とりわけ体調不良の国王に代わり、事実上政治を取り仕切るムハンマド・ビン・サルマン皇太子と緊密な関係を築いた。米議会の反対を押し切り、サウジへの武器売却も拡大した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は急反発、政局の不透明感後退で最高値

ワールド

自民ときょう午後6時に連立政権樹立で合意へ=吉村維

ワールド

米大統領、ゼレンスキー氏に領土割譲迫る トマホーク

ワールド

バングラデシュ空港の大規模火災で輸出用衣料品に甚大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中