最新記事
世界情勢

今、世界は現代版『ゲルニカ』だ!...「京都が体現する共存」から世界を見つめ直した

GUERNICA IS ALWAYS WITH US

2024年12月27日(金)14時25分
アニー・コーエンソラル(歴史学者)
スペインの画家パブロ・ピカソによる「ゲルニカ」を鑑賞する来場者

スペインの画家パブロ・ピカソによる「ゲルニカ」を鑑賞する来場者、ソフィア王妃芸術センターにて(2024年3月)Stefano Politi Markovina-shutterstock

<対話が断ち切られ、憎悪が噴出し、戦火がやまず、愛するもの全てが死に絶えた...。私たちを取り巻く世界は、底なしの絶望から新しい年が始まる>

パリから大阪に向かう最近のフライトでモニター画面に表示された航路図は、まさに2024年の世界の現状を反映していた。

私たちを乗せた飛行機はフランスからオーストリアに向かい、ルーマニア、トルコ、ジョージア、トルクメニスタンの上空をジグザグに通過し、ゴビ砂漠経由で中国を横断、北朝鮮の上空を回って直角に曲がり、大阪を目指す。

戦闘地域(ウクライナ、イスラエル、レバノン、イラン)と、厳しい制裁を科されて西側から完全に疎外されているロシアを避けるため、こんな航路になっていた。私たちはズタズタに断ち切られた世界の上を飛んでいたのである。


砲撃された学校、瓦礫の山と化した病院、泣き叫ぶ女性、通りを埋め尽くす抗議デモの波、キャンパスにテントを張って立て籠もる学生たち──私たちは日々、こうした映像を目にする。24年は底なしの絶望に塗り込められた陰鬱な年だった。

私はこの10年間、新著『異邦人ピカソ(Picasso the Foreigner)』(未邦訳)執筆のための調査に多くの時間を費やしてきた。世界の混乱と荒廃を目の当たりにして、いま脳裏に浮かぶのはパブロ・ピカソの記念碑的な傑作『ゲルニカ』だ。

1937年春、スペイン内戦開始後の最初の春のこと。晴れた空の下に定期市が立つその日、わずか4時間足らずの空爆がバスク地方の小さな町ゲルニカを阿鼻叫喚の地獄に変えた。

ピカソはこの恐るべき理不尽を告発する普遍的な言語を見いだした。文学、絵画、宗教の尽きせぬ素養を総動員し、伝統や過去の傑作からモチーフを得て、この壮絶な悲劇を描く大仕事にとりかかったのだ。

キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 5
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 7
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 10
    男の子たちが「危ない遊び」を...シャワー中に外から…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中