最新記事
米大統領選

米副大統領候補対決はハリス陣営の負け。ウォルズが頭のキレなさと議論経験の不足を露呈

Walz the Ultimate Winner?

2024年10月7日(月)20時05分
ジム・ニューウェル(スレート誌記者)
副大統領候補バンスとウォルズのテレビ討論会

副大統領候補のテレビ討論会。過激と言われるバンス(左)はにこやかに頭のよさを発揮。対するウォルズの反応は鈍く、ハリス陣営の弱点を露呈した(10月1日、ニューヨーク) MIKE SEGARーREUTERS

<副大統領候補の討論会が和やかムードで終始したのは、ハリスのランニングメイトのウォルズが怒るべきところで怒る余裕さえ失っていたから>

米大統領選の投票日をおよそ1カ月後に控えた10月1日、民主党と共和党の副大統領候補がテレビ討論会で対決した。これが両陣営の最後の討論会になりそうだが、後腐れの残る論戦ではなかった。

民主党の副大統領候補であるミネソタ州のティム・ウォルズ知事と共和党の副大統領候補のJ・D・バンス上院議員(オハイオ州選出)は節度を保ち、政策中心の議論を展開。相手の主張に多くの点で同意できることを強調した。


討論の終了後、両候補はしばし雑談を交わし、お互いの妻を紹介し合った。それは共和党の大統領候補がドナルド・トランプ前大統領であることを忘れさせるような和やかな光景だった。

だが現実には民主党の大統領候補であるカマラ・ハリス副大統領と戦うのは、和やかムードとは程遠いトランプだ。そして今回の論戦が選挙結果に何らかの影響を及ぼすとしたら、点を稼いだのはトランプ陣営のほうだろう。

ウォルズもそれなりに健闘した。ただ、バンスのほうが頭の回転が速く、受け答えが巧みで、2期目のトランプ政権は人々が恐れる悪夢にはならないという印象を与えた。

ただバンスの全面勝利かとなると、そうとも言えない。

ウォルズの決定的なミスはバンス発言の矛盾を突くチャンスをみすみす逃したこと。おかげでバンスはごく常識的な理にかなった主張をしているように見えた。

民主党が強みとする政策でバンスがウォルズを守勢に追い込む場面も何度かあった。例えば気候変動。大半のアメリカ人は猛暑やハリケーンにうんざりし、人為活動による地球温暖化を真っ向から否定する共和党の主張を(ウォルズの表現を借りれば)「奇妙な」考えだと思っている。トランプ政権の気候変動対策を聞かれたバンスは直答を避けて、二酸化炭素の排出を減らしたいなら、中国からアメリカに製造業を戻せばいいのに、ハリスはそれと正反対のことをしていると主張した。

これに対してウォルズは論点ずらしを指摘した上で、バイデン政権は製造業の国内回帰を推進してきたと反論できたはずだ。ところが統計的な数字を並べて、ミネソタ州の災害対策を語っただけだった。

ハリス陣営の弱点を露呈

トランプ前政権のオバマケアつぶしも「突っ込みどころ」になったはずだ。オバマケア廃止法案は世論には不人気だったが、トランプはゴリ押し。共和党の故ジョン・マケイン上院議員が反対票を投じたおかげで、成立を回避できた経緯がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と初会談 「多くの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中