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大学の都市部への偏在が、日本の地域格差をさらに助長する

2024年9月5日(木)15時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

当然ながら、各県の大学収容力<表1>は大学進学率と強く相関している。<図1>は、この2つの相関図だ。大学進学率は、18歳人口ベースの浪人込みの進学率をさす。計算方法の詳細は、別記事を参照されたい(「大学進学率50%のウラにある男女差と地域格差」本サイト、2024年1月10日)。

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傾向は右上がりで、大学収容力が高い県ほど大学進学率が高い。各県の大学進学率は、県民所得や親世代の大卒率よりも、大学収容力と強く相関している。大学進学チャンスの地域格差の要因として、大学の地域的偏在は大きいようだ。

各県の大学収容力と大学進学率を男女別に計算し、相関係数を出すと、男子では+0.6941、女子では+0.7918となる。女子の場合、自宅通学の可否が考慮されることが多いためだろう。

大学の地方分散が求められるのは明らかだが、一朝一夕にそれを進めるのは難しい。教育の機会均等の観点からなすべきは、大学に自宅外通学をする学生への経済的支援だ。地方ではただでさえ所得水準が低いのに、学費と下宿費のダブルの負担を課されるのだからたまらない。このため、下宿学生の家賃補助をする大学も出てきている。

地方は大卒学生のUターン促進を

地方創生の兼ね合いでは、都会で大学教育を受けた学生のUターン(Iターン)を促す施策が求められる。地元に戻ったら返済を免除する奨学金を創設してもいいし、増加している空き家を活用した「住」の支援を行うのもいい。今後、IT化によりテレワークが増え、東京の会社に籍を置きつつ、物価の安い地方に居住することを望む人も多くなる。地方にとっては、都市部の高度人材を呼び込むチャンスとなる。

最後に、いま議論されている国立大学の学費値上げとの関連で一言する。地方では大学入学枠が少ないのだが、その大半は国公立で賄われている。県内大学入学者の国公立割合をとると、私大がない島根では100%だし、秋田、富山、鳥取、高知でも9割を超える。このほかにも、地方では自県の大学入学枠の6~7割が国公立という県が多い。

地方の国公立大学は、地元の(低所得層の)子弟に安価で高等教育の機会を提供する機能を果たしている。学費を3倍に爆上げしたらこれが損なわれ、大学教育機会の地域格差がますます開くことになる。

<資料:文科省『学校基本調査』

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