最新記事
SNS

ブラジルに続く?...「X」即時停止命令は他国にも広がるのか EU高官は「禁止もあり得る」と警告

Could Brazil's X Ban Spread to Other Countries?

2024年9月3日(火)18時33分
マリー・ボラン

「アメリカに関しては、ひとつの州が他州へのサービス提供を非合法化する試みは不可能ではない。こうした状況は、複数州で禁止されたポルノサイトなどですでに起こっている(ただし、こうした州の動きを裁判所が支持するかについては、さまざまなケースがある)」

アイルランドの大学、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(UCD)サザーランド法科大学院のT・J・マッキンタイア准教授は、本誌に対してそう語った。

「しかしながら、こうした禁止措置はサイトが自らユーザーの位置を特定し、そうした州にいるユーザーからのアクセスを拒否するかたちで実施されることが多い。合衆国憲法修正第1条の下では、インターネットプロバイダーに対して、そうしたサイトへのアクセスをブロックするよう義務付けることはきわめて困難だ。それに、X(旧ツイッター)などの一般向けソーシャルメディアサイトに対し、アメリカの裁判所がそうした命令を下すことは考えられない」とマッキンタイアは話す。

EU高官は「X禁止もあり得る」と警告

欧州では、ソーシャルメディア・プラットフォームに対する規制が厳しさを増している。欧州連合(EU)は2022年11月、デジタルサービス法(DSA)を施行した。

この法律は、オンラインプラットフォームに対して、コンテンツモデレーションとユーザーの安全性について厳格なルールを定めている。

EU上級代表サンドロ・ゴジ(仏マクロン大統領率いる政党「再生」所属で欧州議会選区から選出)は8月、Xがデジタルサービス法を順守しなければ、欧州で禁止される可能性があると警告した。

コンプライアンス違反の場合は巨額の罰金が科され、欧州運営業者によるブロックもあり得ると、ゴジは述べている。

デジタルサービス法は、欧州のオンライン仲介サービス事業者すべてに適用されている。また、欧州で暮らす4億5000万人の10%以上にサービスを提供している、「非常に大規模なオンラインプラットフォーム(VLOP)」に対しては、いっそう厳格なルールが設定されている。

VLOPには具体的な義務が課されており、違法コンテンツの拡散や社会的危害などの全体的リスクを緩和しなければならない。

マッキンタイアが本誌に説明したところによると、EUにはデジタルサービス法に限らず、ほかの種類の違法コンテンツに関連した規則もある。

「例えばアイルランドでは、国内でのサービス提供許可を得ていない海外の賭博サイトをブロックする法律が定められている。ウクライナ侵攻を受けた制裁措置の一環として、ロシア国営メディアのサイトもブロック対象だ」

ブラジルにおけるXのサービス停止措置、EU高官からの警告、コンテンツモデレーションの取り組みについて公開を定めたカリフォルニア州法。これらを踏まえれば、各政府がソーシャルメディア・プラットフォームをいっそう厳しく規制する流れが強まっていることは明らかだ。

偽情報やヘイトスピーチ、そして、世論に対する大手テックの大きすぎる影響力に対する懸念から生まれたこのような変化は、まだ始まったばかりなのかもしれない。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中