最新記事
キャリア女性

共和党副大統領候補バンスのインド系妻がMAGAに「転向」した理由

Usha’s Not a Mystery

2024年8月10日(土)12時57分
スーザン・マシューズ
エイミー・チュア(左)とウーシャ・バンス(右)

エイミー・チュア(左)はウーシャ・バンス(右)のキャリアの礎を築いた PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE; PHOTOS: PETER KRAMERーNBCーNBC NEWSWIREーNBC UNIVERSAL VIA GETTY IMAGESーSLATE, LEONNEALーGETTY IMAGESーSLATE

<中道左派のはずだったインド系移民2世の弁護士がトランプに寄り添うのは、「政治より権力」という野心ゆえ>

共和党全国大会で大統領候補に指名されたドナルド・トランプ前大統領が、副大統領候補としてJ・D・バンス上院議員を紹介したとき、人々が最も驚いたのはバンスの妻ウーシャの靴だろう。彼女はクラシックなハイヒールではないサンダルを履いていた。

【画像】共和党大会で浮いたウーシャの靴を見る

セカンドレディー候補のファッションは、MAGA(アメリカを再び偉大な国に)界隈の女性が好む濃い目の化粧と超フェミニンなスタイルから劇的に逸脱している。


ウーシャの逸脱はほかにもたくさんある。1980年代にインドからアメリカに移住した両親の娘として生まれ、肉を食べない(党大会のスピーチで、夫は「菜食主義の私に合わせた」と明かした)。そして、おそらく最も重要なのは、彼女の政治的見解が、知られている限りでは特にMAGAらしくないことだ。

DEI(多様性と平等とインクルージョン〔包摂性〕)に力を入れていることで有名な法律事務所で最近まで弁護士として勤めていたし、2021年1月6日の米連邦議事堂襲撃事件には憤慨していると友人たちに話していた。若い頃、周囲は彼女を思想的には中道左派とみていた。

進歩的なサークルで知的に育ってきたと思われる有色人種の女性が、現在の共和党支持者に好かれようとすることに矛盾を感じずにいられない。ウーシャ・バンスは本当に共和党員なのか。彼女はいったい何者なのか。

メンターは「虎の母」

ウーシャの経歴において、その政治観と世界観を形作ってきた最も重要な要素は、ある人物との関係と、その関係が(おそらく弁護士としてのキャリアに既に)もたらした莫大な恩恵だ。

ウーシャとバンスは2人が出会ったエール大学法科大学院時代に、ニューヨーク・タイムズ紙の言葉を借りれば「因習を打破するエイミー・チュア教授に、師事する機会を探し求めた」。自らの中国式育児をつづった11年のベストセラー『タイガー・マザー』(邦訳・朝日出版社)で名をはせたチュアは、「移民出身の野心的な学生のメンターとしても知られていた」。

バンス夫妻が法科大学院で学んだ2010~2013年に、目の当たりにしていたに違いない力学がある。チュアの夫で、同じ法科大学院の教授であるジェド・ルーベンフェルドは、当時から悪行で知られていた(2018年に女子学生へのセクハラを理由に2年間の停職処分を受けたが、本人は今も強く否定している)。

チュアとルーベンフェルドの力関係や学内での役割、特に、学生に法曹界の「クラークシップ」システムへのアクセスを提供していたことは、彼らがアメリカの一流ロースクールで権力を握るための重要な要素だった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国経済運営は財政刺激が軸、中央経済工作会議 来年

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利を維持 米関税引き下げで経済見

ビジネス

EU理事会と欧州議会、外国直接投資の審査規則で暫定

ワールド

ノーベル平和賞のマチャド氏、「ベネズエラに賞持ち帰
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中