最新記事
ミサイル

ウクライナのF-16が搭載する最先端ミサイル「AIM-9X」とは

2024年8月5日(月)17時25分
エリー・クック
ついに到着したF-16のデモ飛行を見るゼレンスキー

ついに来た!F-16の到着を発表し、デモ飛行を見るゼレンスキー(8月4日、場所不明) Ukrainian Presidential Press Service/REUTERS

<ウクライナは待ちに待ったF-16戦闘機の第一陣を手にしただけではなく、搭載するミサイルでもゼレンスキーの希望がかなえられた>

ウクライナにF-16戦闘機の第一陣がようやく到着し、アメリカはF-16向けに幅広い兵器を提供する方針と報じられた。そのなかには、ウクライナが長らく要望していたAIM-9Xミサイルも含まれる。

■AIM-9X「サイドワインダー」の装着・発射訓練

「サイドワインダー」とも呼ばれるAIM-9Xミサイルは、米国の軍事大手レイセオンが製造する短距離空対空ミサイルだ。発射は航空機からでも、地上からでもよく、F-16、F-22、F-35など多くの戦闘機に対応している。

ウォールストリート・ジャーナルが7月30日に報じたところによれば、F-16パッケージにはそのほか、AGM-88「HARM」空対地ミサイルと、射程の長いバージョンの共同直接攻撃弾(JDAM)キットの追加も含まれるという。

後者は、「ダムボム(dumb bombs:愚かな爆弾)」とも呼ばれる無誘導爆弾を精密な兵器に変えてしまうものだ。パッケージには、中距離空対空ミサイル「AMRAAM(アムラーム)」も含まれる。

本誌がコメントを求めたところ、米国防総省は「これらの兵器の使用に関してはウクライナ軍が決めることなので、そちらに聞いてほしい」と返答した。

多種多様なミサイルを提供

とはいえ国防総省の広報担当者は、7月29日に国防総省が発表した新たな軍事支援パッケージに触れ、これは「主要な戦力をウクライナに提供する」ための2億ドルだ、と言った。

国防総省は同じ週に、ウクライナの長期的なニーズに対応する15億ドル規模の支援も発表した。この「重要なパッケージ」には、「NASAMS」と呼ばれる高性能地対空ミサイルシステム用ミサイル、ほかの「短距離および中距離防空ミサイル」、詳細不明の「精密航空弾薬」が含まれている。

NASAMSから発射できるAIM-9Xは、短距離防空兵器としての機能も備えている。

AIM-9Xと中距離空対空ミサイル AMRAAMは、F-16がロシア戦闘機と遭遇して接近戦になった場合、ウクライナのF-16のほうが「優勢」になるだろうと語るのは、米シンクタンク「ランド研究所」欧州事務所で防衛・安全保障担当研究主任を務めるジェイコブ・パラキラスだ。

とはいえ、ウクライナもロシアも、自国の戦闘機を、前線からはるか後方の、敵の長距離地対空ミサイルさえ届かない遠いところにとどめていることから、ウクライナでそうした接近戦が見られることはめったになさそうだ、とパラキラスは本誌に話した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中