最新記事
印露関係

インドのロシア武器離れで貴重な「命綱」を失うプーチン

India Ditching Russian Military Tech Despite Putin-Modi Embrace

2024年7月9日(火)20時52分
ヒュー・キャメロン
プーチンの大統領公邸を訪れたモディ

7月8日、モスクワ郊外にあるプーチンの大統領公邸を訪れたモディ Sputnik/Gavriil Grigorov/Pool via REUTERS

<世界最大の武器輸入国インドは、ロシアがウクライナに本格侵攻しても武器を買い続けてくれる重要なスポンサーだったのだが>

インド軍がロシアの武器離れを起こしている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に残された経済的「命綱」の一つが切れかかっているということだ。

【動画】インドの国産「戦闘機」が住宅街に墜落...カメラが捉えたパイロット脱出と、墜落の現場

統計調査委会社スタティスタによれば、インドは世界最大の武器輸入国だ。2019〜2023年までの世界の全武器輸入に占める割合は9.8%に上る。

インド国防省は2023年3月、今後5〜10年の武器輸入予算として1000億ドルを投じると発表している。

ロシアは以前から、インドの主要な武器供給国だった。しかしここへきて、ロシアがウクライナ戦争を継続しつつ、インドの軍備にも寄与するのは困難であることが明らかになってきた。

未確認だが、インドは旧式のロシア製戦車や大砲、軍艦、ヘリコプターなどの使用を最小限に抑えるようにし始めているという報道もある。

軍用機や最先端の軍備品の大量発注も停止した。

本誌は、インド国防省にメールでコメントを求めている。

ウクライナ戦争が始まった当初、インドは、プーチンのありがたいスポンサーだった。

ウクライナ侵攻後も、インドはロシアから武器を輸入し続けた。2019〜2023年にかけて、ロシアの武器輸出の36%はインド向けだった。

しかし、ロシアが武器不足で次第にインドの注文に応じ切れなくなり、両国の関係はぎくしゃくし始めた。

米軍と兵器を共同生産も

インド空軍は2023年3月、ロシアに発注していた防空ミサイルシステム「S400」が期日まで納入されないことに不満を表明。2024年のロシアからの調達予算を減額した。

ロシアからの武器輸入を減らした後、インドは、自国の軍事需要を満たすべく他国に目を向け始めた。

インドの英字紙「ザ・タイムズ・オブ・インディア」が2024年6月半ばに報じたところによると、インドはアメリカと組み、米軍の装甲車ストライカーの共同生産を検討しているという。

ストライカーは、老朽化するロシア製BMP-2の代わりの歩兵戦闘車として、インドと中国の国境係争地帯に配備される可能性が高い。

だがインドのロシア製兵器離れが報道されるさなか、モディはモスクワを訪問しプーチンと会談している。

モディがロシアを訪問するのは、2022年にロシアがウクライナに侵攻して以来、初めてだ。地政学的な同盟国であり続けてきた両国の関係は、間違いなく岐路にある。
(翻訳:ガリレオ)


ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ドイツ下院、新たな兵役法案承認 ロシア脅威で防衛力

ワールド

NYタイムズ、パープレキシティAIを提訴 無断複製

ワールド

プーチン氏、インドに燃料安定供給を確約 モディ首相

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中