トランプ番組「衝撃の舞台裏」を元プロデューサーが暴露...「詐欺」への加担を悔やむ

THE LONG CON

2024年6月20日(木)15時43分
ビル・プルイット(テレビプロデューサー)

newsweekjp_20240620041546.jpg

5月にニュージャージー州で開かれた選挙集会で演説するトランプ EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

視聴者にはトランプの施設はさすが豪華だと思ってもらわなくてはならないが、現実は違った。カジノではネオンの電球が切れ、カーペットが悪臭を放っていた。私たちは現実が見えないように撮影した。

ジャクソンとランシックは敗者の中からチームメイトを選んだが、ジャクソンはわがままで評判の悪いオモロサ・マニゴールトを指名するという致命的なミスを犯した。

私たちプロデューサーはロケハンのためゴルフクラブに行き、敷地内の屋敷でトランプと合流した。「メラニアはここの存在に気付いてもいない」。トランプは含み笑いを漏らし、屋敷は婚約者(当時、現夫人)のメラニア・ナウスも知らない火遊び用の隠れ家なのだとほのめかした。

敷地を回り、撮影場所を指定された。贅沢なクラブハウスの撮影は必須だった。クラブハウスに行くと設計した建築家がいたので、たまたま2人になったときに建物を褒めた。彼は礼を言い、こう続けた。

「実は約束の報酬をもらっていないんだ。トランプは半額を前払いし、建物が完成すると残りを踏み倒した」

「払うべきものを払わなかった?」

「もし裁判を起こせば、訴訟費用のほうが高くつく。トランプは分かっていたんだ」。だが不倫の話も、カネを踏み倒した話も、番組で取り上げられることはなかった。

「ニガーで納得できるのか」

課題が終わると、私たちは役員室に戻った。トランプを交えて2人のファイナリストを比較する会議を開くためだ。

トランプが生放送のカメラの前で「決断」するのは数カ月後。この会議を撮影するのは、それまでの流れを視聴者に伝えるためだ。どちらが選ばれるか分からないから、ビデオは両者が接戦だったという印象を与えるように編集する。

「クワミはいい戦力になると思う」と、ケプシャーはトランプに言った。問題児のマニゴールトをうまく扱っていた点を評価したのだ。だが、トランプはしかめっ面で首を横に振る。

「なぜ彼(ジャクソン)は(マニゴールトを)クビにしなかった?」と、トランプは尋ねた。「クビにするのは彼ではなく、あなたの仕事だから」と、ビーンストックは答えた。

「自分に権限があるのを知らなかったんでしょう」と、ケプシャーは言った。トランプはまた首を横に振る。「なるほど」と、トランプは誰に言うともなしに言った。

「だがね、ニガー(黒人の蔑称)が勝つことをアメリカは納得するかな」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国の不動産投資・販売、1─11月軒並み落ち込み拡

ビジネス

日銀短観、景気は緩やかに回復との政府認識と齟齬ない

ワールド

NZ政策金利、現行水準にしばらくとどまる見通し=中

ビジネス

MUFG、米プライベートクレジット市場で新ファンド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中