最新記事
追悼

「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家の「早すぎる死」から政府は何を学べるか

TORIYAMA AND SOFT POWER

2024年4月25日(木)12時11分
トム・リー(米ポモナ大学准教授〔政治学〕)

人材確保の環境づくりを急げ

ソフトパワーの経済への影響はより明らかだ。アメコミ出版社ダーク・ホース・コミックスの場合、刊行物のわずか1%にすぎない日本の漫画が売り上げの60%以上を占める。

ほかにもスタジオジブリの映画や任天堂のポケモンシリーズなど、日本のポップカルチャーは世界中でカルト的な人気を誇ると同時に主流派にも好評だ。

伝説的ゲームデザイナー宮本茂がキャラクターデザインを手がけた人気ゲームの映画版『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、全世界興行収入13億ドルを突破。続編も2026年に公開予定だ。

こうした桁外れの数字がソフトパワーの売り込みに各国政府を過剰介入させてきたのだろう。だが皮肉にも介入は有害無益になりがちだ。韓国文化の輸出、いわゆる「韓流」に躍起の韓国政府は過度な規制でKポップの成功に水を差し、孔子学院をプロパガンダに利用する中国政府のやり方は学問の自由や資金提供の不透明さなどで猛反発を買っている。

日本政府は21年の東京五輪の開会式で墓穴を掘った。スキャンダルが相次いだ末に演出は盛り込みすぎ、大人気の曲やアーティストやキャラクターが登場せず盛り上がりに欠ける内容......。その一方で、寿司や和牛など和食文化の海外での紹介・消費の方法に口出ししようとしている。

政府はむしろ国内でアートの振興を妨げている問題に目を向けるべきだ。鳥山の早すぎる死はクリエーティブ産業の構造的な問題に改めて光を当てている。

働きすぎ、ひと握りの天才への依存、低賃金、人手不足といった問題を解決するには、優秀な人材を確保できるよう政府が働き方改革や新たな移民政策によって支援する必要がある。

鳥山の死は何百万ものファンの心に大きな穴をあけた。だが彼の永遠に色あせない作品と『ドラゴンボールZ』に触発された次世代のクリエーターたちが生み出す新たなアートが、その穴を埋めるに違いない。

From thediplomat.com

ニューズウィーク日本版 BTS再始動
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月7号(3月31日発売)は「日本企業に迫る サステナビリティ新基準」特集。国際基準の情報開示や多様な認証制度――本当の「持続可能性」が問われる時代へ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、デルタ航空と機内Wi─Fi契約 スターリ

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、一時1800円高に上げ拡

ビジネス

大企業製造業DI4期連続の改善、非製造業横ばい 先

ワールド

トランプ氏、対イラン作戦2─3週間内に終結も 「合
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 8
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中