最新記事
ロシア軍事

ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国境の軍備を増強

Russia Preparing for Large-Scale Conflict With NATO: ISW

2024年4月22日(月)17時17分
ブレンダン・コール

訓練で木立に紛れるフィンランド兵 Notify/YouTube

<北欧2カ国のNATO加盟に対抗した軍の再編に続き、ミサイル部隊などを西部国境に新たに配置したとの報道が>

ロシアはNATOとの大規模な武力紛争に向け、軍の一部の増強を進めているとの分析を、アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)が4月19日、明らかにした。

ISWはロシア政府寄りの日刊紙イズベスチヤが、ロシア国防省が新設されたレニングラード軍管区の増強を行っていると報じたのを受けて分析を行った。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年12月、フィンランドがNATOに加盟したことへの対抗措置として同軍管区の新設を明らかにしていた。

ロシア国防省の消息筋はイズベスチヤに対し、フィンランドと国境を接するロシアのカレリア共和国に弾道ミサイル「イスカンデルM」を運用するミサイル旅団を展開させたと語った。戦車師団を置くことも検討されているが、まだ決定には至っていないという。

またロシアは、この地域に空軍と防空軍を新たに配置。これは戦闘機や爆撃機の連隊や防空部隊、通信隊で構成されるとイズベスチヤは伝えている。

本誌はロシア国防省に電子メールでコメントを求めたが回答は得られていない。

ロシア海軍バルト艦隊の元司令官、ウラジーミル・バルエフはイズベスチヤに対し、これはフィンランドのNATO加盟に対する対抗措置であり、ロシアの西部国境の軍事力増強が狙いだと述べた。

「どんな可能性もありうる」とプーチン

バルエフは「最悪の場合、ミサイル旅団は脅威となるNATO軍に関する任務をこなすことになるだろう。ロシアはフィンランド(の動き)を注視しなければならない」と述べた。

プーチンがウクライナに大規模侵攻したことで安全保障上の脅威が高まり、フィンランドはNATO加盟を急いだ。北大西洋条約の第5条には、加盟国が1国でも攻撃を受けた場合は全加盟国への攻撃と見なすという集団防衛の規定がある。

フィンランドと隣国スウェーデンの加盟により、NATO加盟国は32カ国に増えた。これに対抗して、ロシア国防相セルゲイ・ショイグは3月、2つの軍と30の編隊を年内に新設すると明らかにした。

この計画には、ロシアの軍管区の再編や、軍全体の兵員数を120万人から150万人に増やすことも含まれる。だが専門家は、規模を拡大するにしても、きちんと人員を配置し、訓練し、装備を施すことができるのかと疑問を呈している。

だがプーチンと政権幹部はウクライナ侵攻はロシアの存続を賭けた西側との戦いの一環だと主張し、侵攻の長期化を正当化しようとしている。

アメリカのジョー・バイデン大統領ら、ウクライナを支援する国々のトップは、ロシアはウクライナに留まらず、その先にあるNATO加盟国にも狙いを定めていると警告している。

プーチンはそうした主張を「ナンセンス」と一蹴してきた。だが、ロシア政府や親ロシア派メディアなどが発するメッセージはあいまいな上、プーチンは3月の大統領選挙で勝利した後、NATOとの対立に関して「どんな可能性もありうる」と述べている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国外為当局と年金基金、通貨安定と運用向上の両立目

ワールド

香港長官、中国の対日政策を支持 状況注視し適切に対

ワールド

マレーシア、16歳未満のSNS禁止を計画 来年から

ワールド

米政府効率化省「もう存在せず」と政権当局者、任期8
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中