最新記事
爬虫類

まるで「綱引き」...2匹の猛毒ヘビが同じ獲物を捕食しようとして争う「レア映像」が公開される 野生では初

Wild Coral Snakes Filmed in Tug-of-War Over Prey in Scientific First

2024年4月2日(火)19時55分
ロビン・ホワイト
ツノマベニサンゴヘビ

(写真はイメージです) Fabio Maffei-Shutterstock

<コロンビアの熱帯雨林で、2匹のツノマベニサンゴヘビが1匹のアシナシイモリをめぐって争う様子が撮影された>

2匹のツノマベニサンゴヘビ(Micrurus mipartitus)が獲物をめぐって争っている様子が初めて記録された。

【動画】まるで「綱引き」...2匹のツノマベニサンゴヘビが1匹のアシナシイモリを奪い合うレアな瞬間

強い毒をもつこの2匹のヘビは1匹のアシナシイモリ(四肢のない原始的な両生類)を食べようとしているところを撮影された。コブラ科に属するヘビで労働寄生(別名「盗み寄生」、食物を横取りすること)の事例が記録されたのはこれが初めてのこと。

この記録は、オーストリア爬虫類学会の国際的な査読付きオープンアクセスジャーナル「Herpetozoa」に掲載された最新研究のなかで発表された。映像では2匹それぞれが獲物をあごでがっちりくわえ、綱引きをしているように見える。

2匹のヘビの争いはコロンビア西部バジェ・デル・カウカ県の熱帯雨林で勃発した。研究論文によれば、観察中に1匹がもう1匹にかみついたという。ただし、これは偶発的なものだと考えられている。17分にわたって争いが続いた後、片方が敗れて獲物を相手に譲った。勝ったほうのヘビは獲物と共にその場を離れた。

飼育下ではしばしば見られる行動

動物種において餌の強奪が記録された例はこれまでにもある。だが自然環境にいるヘビで観察されることは極めて稀だ。研究論文によると、飼育下のヘビでは比較的よく見られるという。

論文の筆頭著者ヘンリック・ブリングソーは声明のなかでこう述べている。「飼育下のヘビの場合、2匹以上のヘビが入れられた飼育容器で1匹のエサしか与えられていないケースでしばしばそうした行動をとる。でも、野生でこれがもっと頻繁に観察されてこなかったのがむしろ驚きだ」

野生での事例があまり報告されていないのは、これらのヘビの「見つけにくい特性」に起因する。自然の中でヘビを観察するのは難しく、ましてやこうした行動を見るとなればなおさらだ。

ツノマベニサンゴヘビが属するコブラ科は世界でもとりわけ危険なヘビのグループに数えられる。コブラ科にはマンバ、コブラ、タイパン、タイガースネーク、デスアダー、ウミヘビ、サンゴヘビなど400種もの多様なヘビが属している。ツノマベニサンゴヘビは中米と南米北部に生息する在来種だ。

今回の研究は、この種のヘビとその獲物との関わり方について新たな知見をもたらすものだ。

「彼らはアシナシイモリを検出する際、とりわけ2匹が同じ獲物を感知した今回のケースから化学受容器に頼っている可能性が高いと考えられる。飼育下での事例が多く知られていることからすれば、ヘビの労働寄生は過去に発表されたごくわずかな事例が示すよりも頻繁に起きている可能性がある」

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-FRB、シティへの改善勧告を解

ビジネス

英、金融指標の規制見直し 業界負担を軽減

ワールド

韓国、ウォン安への警戒強める 企画財政相「必要なら

ワールド

米、台湾への新たな武器売却承認 ハイマースなど11
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中