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多様性の名の下で忘れ去られる「白人男性」...彼らもまた支援が必要ではないか?

ENGAGING WHITE MEN

2024年3月29日(金)19時30分
ロン・カルッチ(米コンサルティング会社ナバレント共同創業者)、ゾーイ・スペンサーハリス(米バージニア州立大学社会学・刑事法学助教)

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WMRJのガーショム  ADRIAN GERSHOM

公平性や包摂性の議論に効果的な形で加わり、より深い絆を築きたいと、白人男性が望むなら? まず、自分の社会的位置付けを問い直すべきだ。白人であり、男性であることの意味を定義する上で根拠にしている考え方は何か。意識的、または無意識的にどんな信念を抱いているか。

「白人男性にとって、男らしさとは自立自存を意味する」と、マーケティングコンサルタントで、WMRJのメンバーであるエイドリアン・ガーショムは言う。「誰かに依存することは弱さの表れと考えて、帰属する機会を自ら奪っている」

実際には白人男性も、自分には実力がないとか、失敗したり期待に応えられないのではといった不安に苦しんでいる。そしてその反動で、見た目も発言も自信にあふれていて、成功しているように見えなくてはいけないという強迫観念に駆られ、他者との関わりを拒絶してしまう。

非白人社会が羨ましい?

このようなときは、自分が疎外された経験を思い出すべきだ。白人男性の経験など、歴史的に疎外されてきた集団の経験と比べれば取るに足らないものだが、自分の経験を振り返ることで、そうした経験を日常的にしている人たちへの共感や思いやりが大幅に増すはずだ。

例えば、学校でいじめられたり、入りたかったクラブへの入部を認められなかったことはないか。仲間外れに遭った経験でもいい。どんな気持ちになっただろう。どう対処しただろう。そんな気持ちに毎日させられることを想像できるだろうか。

たとえ帰属場所が見つからなくても、帰属意識らしきものを得られる場所を見つけることはできる。「私の場合、帰属意識は共通の経験から得られるものであって、誰かとつながりたいからといって得られるものではない」と、ガーショムは語る。帰属意識とは「教会やスポーツや社会活動など、誰かと何かを一緒にやることで生まれるものだ」。

「あるとき自分が、白人男性の特権を持たない人たちの帰属場所を羨ましいと思っていることに気付いた」と、ガーショムは言う。「彼らには互いをサポートしたり、共通の目的のために協力したりする文化がある。私はそうしたものを切望していたが、それを得られる場所がなかった」

こうした満たされない欲求を満たすため富や成功を築くことに夢中になっていないか。自分の意思を強引に押し通していないか。むなしさを忘れるため薬物に頼っていないか。

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