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「人質斬首」イスラム国はまだ終わっていない

The Never-Ending Story

2024年2月8日(木)16時38分
伊藤めぐみ(ジャーナリスト)

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シリア北東部ハサカの刑務所に収容された元ISの関係者(2019年)


民族と民族の間で翻弄

地域へ帰ることが難しい理由は、イラク国内の特殊な事情とも関係している。イラクは連邦制で、首都バグダッドにあるイラク中央政府と、クルド人を中心にした北部のクルド人自治区がある。自治・独立の在り方、境界線などをめぐって、両者はやや緊張関係にある。

司法制度に関してもいびつな状況にある。数年前のIS掃討作戦で、クルドの治安部隊に拘束され、クルドの刑務所に収監されたISの戦闘員も多い。彼らはクルド人自治区で服役することになる。

しかし刑期を終えてイラク中央政府の管轄下にある家に戻ろうとすると、中央政府側の法律が適用され、中央政府側でも刑期を科されるという事態が起きている。クルド人自治区での懲役期間は算入されないので、一から刑期を務めなければならない。

このような元囚人たちが向かう場所の1つが「ハサンシャム避難民キャンプ」である。クルド人自治区にある北部の町アルビルと、中央政府管轄下の都市モスルの間にある緩衝地帯に位置する。クルド人自治区での滞在資格がなく、また中央政府管轄地域で再び刑を科されるのを避けようとする人々が集まっているのだ。

元囚人だけでなく、親戚にISメンバーがいたという女性や子供たちも、地域住民からの報復を恐れて暮らしており、他の避難民も合わせて全体で1万2000人に上る。

罪を償うために適切な刑期が科される必要はあるものの、イラク国内でも改善の余地があると議論されている法律の在り方が原因で、先に進めない人々がいる。ISとの戦争終結から7年がたち、イラク政府は復興に向けて、全国の避難民キャンプを既に閉鎖、あるいは閉鎖する方向で動いている。

さらに問題は隣国シリアとも関連している。シリア北東部のクルド人支配地域に、約1万人のIS関係者が拘束されているのだ。うち3000人がイラク人である。

ISが支配していた当時は、戦闘員や支配下の人たちはイラクとシリアの国境を自由に行き来していた。19年にシリアで最後のISの拠点とされたバグズが陥落し、イラクから来た戦闘員や支配下の人々はシリアの治安機関に拘束された。女性や子供たちは、シリア北東部のアルホル難民キャンプとロジ難民キャンプへ、男性は刑務所や収容所へと送られた。

シリア北東部は首都ダマスカスにある政府ではなく、クルド人勢力が実効支配している(イラクのような公式な自治政府ではない)。協力関係にある米軍の支援も受け、刑務所を運営している。刑務所を訪れたことがあるイラク人の報道関係者によると、「イラクの刑務所が5つ星ホテルに見えるほど、シリア北東部の刑務所は悲惨だ」という。

別のシリア人報道関係者は、外国籍のIS関係者の問題についてこう指摘した。

「イラク人などの外国人はシリアに滞在する資格がないため、刑期を終えてもシリア人と違って釈放することができない」

釈放してしまえば彼らは不法滞在になる。本国への帰還は、相手国政府が非協力的なため進んでいない。

最大の犠牲者は子供たちだ。強制されて参加した少年兵や当時の記憶さえあまりない子供もいる。彼らも同じように少年刑務所や、キャンプに入れられる。子供に対しては脱過激化や基礎教育などもわずかながら行われている。しかし、18歳になると自動的に大人の刑務所に送られるのだ。刑務所に入ればこれまでのリハビリが生かされることはほぼない。

ISは、「カブス・オブ・ザ・カリフ」という10歳から15歳の少年兵組織をつくっていた。19年のシリア最後の拠点陥落で拘束された時には13歳ほどだった少年が5年たち、刑務所に入れられるという時期に来ている。刑務所しか生きる場所がない人たちがつくられているのだ。

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