最新記事
台湾

【解説】台湾総統選をかき回す「第3の男」柯文哲の正体

From Green to Blue

2023年12月7日(木)15時30分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)、レブ・ナックマン(国立政治大学助教)

柯と民衆党は、中台関係の議論には加わらないと主張しながらも、現状維持を繰り返し表明している。「一つの中国」の原則を口頭で認め合ったとされる「92年コンセンサス(九二共識)」は、国民党の対中政策の柱でもある。これについて質問された柯は、その呼び方は台湾では受け入れられないから、中国政府も変えるべきだと答えた。

もっとも、対中国に関して柯の見解は一貫していない。例えば、ひまわり運動が反対した中台の経済協力枠組み協定(ECFA)の修正や、台湾の離島である金門島と中国本土の間に橋を架けることを提案している。

柯は他の総統選候補と違って、多くの若者から強い支持を得ているとみられる。この点は、台湾の若い世代が自分たちは中国人ではなく台湾人であるというアイデンティティーを強めていることと、相反するようにも思える。柯の一見ユニークな魅力は「柯モデル」とも呼ばれるが、ポピュリズムにすぎないという批判もある。

柯の「緑色」から「青色」への転換は、多くの有権者に衝撃を与えた。現在の支持基盤は、二大政党を嫌う台湾人や、政治家らしくない個性に魅力を感じる若者、国民党の支持層だが現在の党に不満をくすぶらせる有権者が混在している。

ひまわり運動で反国民党・反馬総統のデモに参加した柯は、国民党からの総統選出馬を目指して壇上で馬と並んだこともある。その長くユニークな道のりは、来る総統選を興味深いものにしている。

From thediplomat.com

ニューズウィーク日本版 AIの6原則
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、カタール首相と会談へ ガザ停戦巡り=ア

ワールド

米ウェイモ、ロボタクシー走行距離1億マイル達成 半

ワールド

中国、自然災害で上半期76億ドル損失 被災者230

ワールド

米国連大使候補ウォルツ氏、指名公聴会で対中強硬姿勢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 5
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 6
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 7
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 8
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中