最新記事
イスラエル

もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない、ネタニヤフとその代償

BIBI’S SURVIVAL PLAN

2023年12月6日(水)14時40分
ベン・リンフィールド(元エルサレム・ポスト紙アラブ問題担当)

231212P24_NYF_02.jpg

エルサレムのイスラエル国会議事堂。ネタニヤフは野党と手を組む緊急政府を発足させて生き残りを図るが KOLDERAL/GETTY IMAGES

わざと戦争を長引かせる?

今のところネタニヤフは「戦時には政権転覆を図ってはならない」という金言の恩恵を受けているようだ。

しかしテレビ局「チャンネル12」のコメンテーターを務めるアムノン・アブラモビッチは、ネタニヤフが首相として生き残るために、戦略的な目標を達成した後も戦争を長引かせようとするかもしれないと指摘した。

「確実にそうするとは言えないが、可能性は排除できない」と彼は言う。

支持率が急落している上に、公の場で責任を追及されるのを避けるために軍関係者の葬儀にも出席していない現状を考えると、確かにネタニヤフの支持回復は遠そうだ。

それでも彼は10月に、野党・国民統一党から前国防相のベニー・ガンツ党首と元参謀総長のガディ・アイゼンコットの2人を引き入れて緊急政府を樹立。当面、首相として生き残る道を確保した。

ネタニヤフや側近たちはこれを、イスラエルを破壊しようとする者に対抗する国家生き残りのための戦いと位置付け、緊急政府が下す決定は首相個人の生き残り戦略とは無関係だと主張することに利用している。

「これはネタニヤフ対ハマスではなく、イスラエル対テロの戦いだ」と、リクード党議員で国会の外交・防衛問題委員会のメンバーであるボアズ・ビスムートは言う。「問題はネタニヤフではない」

しかし戦闘が始まってほぼ2カ月が過ぎた今も、ハマスの越境攻撃を許した責任はネタニヤフにあるという見方は強い。ネタニヤフは長年にわたり、カタール政府によるハマスへの資金援助を許してきた。

さらに、パレスチナ自治政府の代理で徴収している税の自治政府への送金を何度か差し止めてもいる。パレスチナに分断を引き起こし、イスラエルに対する国際的な和平圧力を回避しようという計算なのだろう。

「ハマスの強化がネタニヤフの狙いだ」と、ワシントンでイスラエル軍事駐在武官を務めた退役将軍のガディ・シャムニは言う。「彼は歴史のごみ箱に葬り去られるべきだ」

ネタニヤフは、ハマスの襲撃を許した責任を少しでも認めれば政敵に揚げ足を取られることを懸念していると、ブシンスキーはみる。アルフェルに言わせれば、ネタニヤフは調査委員会が責任の所在を確定させる前に自身の非を認めることにならないよう慎重になっているという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国首相、フォーラムで一段の経済開放約束 日本企業

ワールド

G7、エネ供給支援へ必要な措置講じる用意 外相声明

ワールド

トランプ氏、米空港にICE捜査官派遣と警告 予算巡

ワールド

トランプ氏、イランに48時間以内のホルムズ開放求め
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 4
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中