最新記事
イスラエル

もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない、ネタニヤフとその代償

BIBI’S SURVIVAL PLAN

2023年12月6日(水)14時40分
ベン・リンフィールド(元エルサレム・ポスト紙アラブ問題担当)

11月に入り、イスラエルのメディアにネタニヤフの次の発言が流れた。

「今はただ一つのことに対処する時だ。ハマスを排除し、人質を取り戻し、ガザに新政権を樹立する」

同時に、ネタニヤフは権力維持には責任転嫁が重要と考えているようだ。彼は10月28日、諜報と治安のトップを含む安全保障担当高官から「ハマスは抑えられている」と何度も報告されていたとX(旧ツイッター)に投稿し、自らの責任を否定。これには連立政権内からも批判が出て、投稿削除と謝罪に追い込まれた。

極右も取り込む手綱さばき

チャンネル12が11月16日に発表した世論調査には、国民の不満が如実に表れた。

「選挙が今日行われたらどこに投票するか」という問いには、ネタニヤフ率いるリクード党を中心とする連立政権が議席数を現在の64から45に減らす一方で、ガンツが党首を務める国家統一党は議席を12から36へと大幅に伸ばすという結果が出た。「首相にふさわしい人物」には41%がガンツを支持し、ネタニヤフは25%にとどまった。

ビスムートは、世論調査は必ずしも正確ではないと指摘する。「国内を回っていると分かるが、世論調査やメディア報道と現実との間には常にギャップがある」

リクード内でネタニヤフの立場は強固なままだと、ブシンスキーは言う。「リクードで指導者に逆らえば有権者は離れていく。ネタニヤフはいまだ象徴的なリーダーだ」

しかもネタニヤフは依然として巧みな手綱さばきで、ユダヤ教超正統派や超国家主義者を含む連立パートナーを手なずけているようだ。戦闘開始に伴うイスラエル人の避難や危機対応に使うべきだとの批判をよそに、彼は超正統派組織への予算配分の継続を支持している。

「彼は国家の優先事項を認識しつつ、超正統派との関係を継続するコツを心得ている。万一のときは彼らを頼れることも分かっている」と、ブシンスキーは言う。次の総選挙は通常なら3年先だから、今は連立パートナーの反乱がネタニヤフを引きずり降ろす唯一の道かもしれない。

しかもネタニヤフは、「ガザへの核兵器使用は選択肢の1つ」と発言した「ユダヤの力」党の極右閣僚アミハイ・エリヤフを解任せず、職務停止の処分にとどめた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却を承認 ハイマースなど過去最大

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中