最新記事
イスラエル

もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない、ネタニヤフとその代償

BIBI’S SURVIVAL PLAN

2023年12月6日(水)14時40分
ベン・リンフィールド(元エルサレム・ポスト紙アラブ問題担当)
ガンツとネタニヤフ

野党から緊急政府に入ったガンツ(右)のほうがネタニヤフ(左)よりも支持率が上(2021年総選挙でのガンツの広告) AMIR LEVY/GETTY IMAGES

<ハマスの奇襲を許した責任を問われて支持はガタ落ちし、イスラエル首相は自身の政治生命を維持することに全力を傾けるしかなくなっている>

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の政治生命は危機にさらされている──そう考える理由は、いくらでもある。

イスラム組織ハマスによる奇襲攻撃を許して少なくとも1200人の市民が惨殺されるという、イスラエル史上最悪の安全保障上の失態を犯した。

その報復としてパレスチナ自治区ガザで戦争を始めたが、非現実的な目標を掲げて事態は泥沼化している。世論調査での支持率は底を打ち、おまけに現在も3つの汚職の罪で裁判中の身だ。

ところが10月7日のハマス襲撃から日を重ねるごとに、ネタニヤフは戦争終結後も権力の座にとどまる決意を固くしているようだ。周囲の状況さえも彼に有利になりつつあるようにみえる。

彼の続投戦略は3つの要素から成るようだ。ハマスの襲撃を許した安全保障上の責任をほかになすり付ける、現在の連立政権を何としても維持する、そして具体的な成果を上げられるまで時間を稼ぐ......。

「彼は時間が国を癒やしてくれると当てにしている」と、ネタニヤフの元側近で政治評論家のアビブ・ブシンスキーは言う。

ハマスは11月下旬、戦闘の休止とイスラエルで収監されていたパレスチナ人約150人の釈放と引き換えに、イスラエル人の人質約50人を解放した。この取引はイスラエルで広く支持されたが、それでも多くの国民はガザに人質が多数残っていることに心を痛め、不満を募らせている。

ネタニヤフの政治キャリアの中でも最悪の危機が始まったのは10月7日。ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けて大勢の市民を惨殺し、約240人を拉致した。イスラエル史上、最も大きな犠牲が出た事件だ。

イスラエル軍のヘルツィ・ハレビ参謀総長や治安機関シンベトのロネン・バー長官は失態の責任を認めたが、ネタニヤフは頑として責任を認めず、国民の間に怒りの声が高まっている。

独立機関による調査を行って責任者を処分するよう求める当局者やアナリストも多いが、ネタニヤフは「今はハマスに勝利することに全力を注ぐべき時だ」と言い張る。

評論家のヨシ・アルフェルは、ネタニヤフが率いる与党リクードの中から彼を批判する声が上がっていないことに注目すべきだと指摘する。「ネタニヤフは駆け引きに忙しく、しかもうまい」と、アルフェルは言う。

彼に言わせれば、ネタニヤフはその抜け目のなさによってイスラエル史上最長の在任期間を誇る首相となった。今年7月には大規模な抗議デモをものともせず、裁判所の力を弱める司法改革を断行した。

「現時点では私たちに見えない多くの力が働いている。彼の政治生命が終わりかどうかは分からない」と、アルフェルは指摘する。

まちづくり
川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に──「世界に類を見ない」アリーナシティプロジェクトの魅力
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

G7、エネ供給支援へ必要な措置講じる用意 外相声明

ワールド

トランプ氏、米空港にICE捜査官派遣と警告 予算巡

ワールド

トランプ氏、イランに48時間以内のホルムズ開放求め

ワールド

イラン、イスラエルの核施設付近攻撃 初めて長距離ミ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 4
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中