最新記事
注目ニュースを動画で解説

意外な国が漁夫の利...ガザ戦争後の「勝ち組」国家、「負け組」国家は?【アニメで解説】

2023年11月27日(月)16時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ガザ戦争とウクライナ情勢

Newsweek Japan-YouTube

<余波はどこまで広がるのか? ガザ戦争の世界への影響について解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>

アメリカの情報・判断力への信頼が失われ、民主主義国家の集まりであるEUの弱体化が露呈。この隙に「あの国々」が世界の多極化を狙っている。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「意外な国が漁夫の利...ガザ戦争後の「勝ち組」国家、「負け組」国家は?【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

 
◇ ◇ ◇

悪しき地政学的展開が起きても、多くの場合は逆の好ましい力が働いて均衡を取り戻す。たいていは頭を冷やしたほうが勝つため、ある場所で起きた出来事の余波が遠くまで広がることは少ない。

ただ、今回のガザ戦争は不幸な例外の一つかもしれない。アメリカ政府はこの争いを局地的なものに抑え込もうと努力しているが、戦域が拡大すればそれだけ損害も危険も増すことになる。その影響の答えを探るには、10月7日以前の地政学的状況に立ち戻る必要がある。

ガザ戦争の戦域

まずアメリカとNATO諸国は、ウクライナに侵攻するロシアを弱体化させようとしていた。しかし、今夏の反転攻勢は行き詰まり、ウクライナ側が占領された領土を取り戻す可能性は遠のきつつあった。

また、中国とは事実上の経済戦争を繰り広げていた。中東では、サウジアラビアが中国に接近するのを防ぐため、イスラエルとの関係正常化を条件に一定の安全保障を約束。

パレスチナの問題に目をつぶってイスラエル政府の蛮行に見て見ぬふりをしていたのでは、いずれ火を噴くのは避けられないという批判もあった。

米中経済戦争

ハマスの奇襲で始まった今回の戦争は、アメリカ外交にどんな影響を及ぼすのか。まず、サウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けたアメリカ政府の努力は水泡に帰した。

次に、中東に費やす時間と労力を減らし、アジアに向ける時間とエネルギーを増やそうとしていた最近の外交スタンスを見直さざるを得なくなった。これは中国に圧力をかけられる台湾や日本、フィリピンにとっても良いニュースではない。

そして最後に、ウクライナにとっては最悪な展開となった。報道はガザ情勢一色となり、ウクライナ支援を支持する世論は後退している。

ガザ危機と東アジア情勢

EUにとっても頭の痛い問題だ。ロシアのウクライナ侵攻で結束が強まっていたが、今回のガザ戦争で欧州の亀裂が再び表面化した。イスラエルを無条件で支持する国もあれば、パレスチナの大義に共感を示す国もある。

ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長とジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表の間にも深刻な亀裂が生じている。

EUトップに亀裂

西側諸国は最悪の事態に直面しつつあるが、ロシアと中国にとっては願ってもない展開だ。

ガザ戦争は、アメリカの一極支配よりも多極的な世界秩序のほうが好ましい、という中ロ両国の長年の主張に一定の論拠を与えかねない。中ロのメディアはこれを好機にアメリカ批判を強め、国際社会での支持を広げている。

グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国では、欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。パレスチナの人々への共感はもともと欧米以外の国々のほうがはるかに強く、ハマスに対するイスラエル軍の桁違いな報復で溝はさらに深まった。

勢いづく中ロメディア

北大西洋両岸の快適な地域に属さない国々から見れば、欧米の関心はあまりに身勝手で恣意的だ。欧米のメディアは中東での新たな戦争ばかりを取り上げ、政治家もせっせと自らの見解を述べている。

(ガザ戦争が始まったのと同じ)10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実についてはほとんど触れられていない。

今回のことでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではないが、人権だの法の支配だのといった西側の議論に、彼らは耳を貸さなくなるかもしれない。中国とアメリカをてんびんにかけて、様子を見る国も今より増えるだろう。

漁夫の利を得る中国

■詳しくは動画をご覧ください。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

2回目の関税交渉「具体的に議論」、次回は5月中旬以

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米国の株高とハイテク好決

ビジネス

マイクロソフト、トランプ政権と争う法律事務所に変更

ワールド

全米でトランプ政権への抗議デモ、移民政策や富裕層優
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中