最新記事
ヘルス

アルツハイマー病、治療薬の次はワクチン 少なくとも7つの臨床試験が進行あるいは終了段階に

2023年11月27日(月)11時22分

門は開かれた

バクシニティはワクチン「UB─311」の小規模な第2フェーズ臨床試験を既に終えており、最も開発が進んでいる企業かもしれない。メイメイ・フー最高経営責任者(CEO)は、レケンビの成功によって長らく疑問視されてきた仮説が立証されたと語った。

「分かっているのは、特定の悪い形のアミロイドを除去すれば、臨床結果に効果が現れるということだ。これは素晴らしい」とフー氏は言う。

台湾で43人の有志を対象にバクシニティが行ったフェーズ2a試験のデータでは、同社ワクチンは78週間後の段階で安全性と忍容性を示し、ほぼ全ての参加者が抗体反応を示した。

脳腫脹の症例はなかったが、14%(6人)が脳出血を発症した。脳出血は点滴型の治療でもよく見られる副作用だ。このデータは8月に公表された。

バクシニティは、より大規模な確認試験に資金を提供してくれるパートナーを探していたが、ここ数年の環境は「かなり冷え切っていた」とフー氏は語る。「レケンビが承認されたことで門戸が開かれ、熱意が高まり投資も大幅に増えた」と述べた。

過去の失敗

最初に開発が試みられたアルツハイマーワクチンは有用性を示していたものの、免疫系のT細胞からの制御不能な反応を引き起こしてしまった。

現在、開発中の新ワクチンのほとんどは、抗体を生成する免疫細胞であるB細胞を標的としている。

ACイミューンのワクチンはB細胞のみを活性化すると、南カリフォルニア大学のマイケル・ラフィイ博士は言う。

ラフィイ氏が主導した第1フェーズ試験で、ACのワクチンは髄膜脳炎を起こさなかったものの、免疫反応を示したのは参加者の一部にとどまった。同社は現在、改良版の試験を行っている。

ACはまた、医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と、有毒なアルツハイマー病タンパク質、タウを標的とするワクチンについて共同研究を行っている。

一方、プロテナは来年、アルツハイマー予防を目的として、ベータアミロイドとタウの両方を標的とするワクチンの試験を開始したいと考えている。

プロテナのジーン・キニーCEOによると、同社のワクチンは高レベルの成熟した抗体を生成する。このようなワクチンは通常、免疫系統の弱い高齢者に投与されるため、強い免疫反応を起こすことが重要だとキニー氏は説明した。

同氏は、アルツハイマーの症状が出る前の人々にとってワクチンは理想的なものだと考えている。「何より望むのは、病気の発生を未然に防ぐことだ」と同氏は語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中