ハマス、周到に用意された「奇襲攻撃」の意図は? イスラエルとサウジの関係正常化阻止か
イスラム組織ハマスが7日の大規模攻撃で狙ったのは、イスラエルだけではない。写真はハマスの攻撃を受けたイスラエル南部スデロットの町の交差点。7日撮影(2023年 ロイター/Ammar Awad)
イスラム組織ハマスが7日の大規模攻撃で狙ったのは、イスラエルだけではない。この地域では、米国がイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を後押しするなど新たな安全保障秩序の構築に向けた動きが活発化しており、ハマスにはパレスチナ国家樹立への希望を脅かしかねないこうした動きにくさびを打ち込む狙いがあったとみられる。ハマスを支援するイランも、警戒感を強めていた。
米国は、サウジとの防衛条約締結などを見返りにサウジとイスラエルの国交正常化を進めている。サウジとイランの関係強化に歯止めをかける狙いがある。
パレスチナ当局者によると、イスラエルを攻撃して250人以上を殺害し多数の捕虜を拘束したハマスの武装集団のメッセージは、イスラエルが安全保障を望むならばパレスチナ人を無視してはならず、サウジとのいかなる合意もイランとの緊張緩和が崩れることになる、というものだった。
ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏は、カタールを拠点とするテレビ局アルジャジーラで「(アラブの国が)イスラエルとの間で結ぶ正常化の合意により、この衝突が終わることはない」と述べた。
イランや同国が支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの事情に詳しい消息筋は、「これは、イスラエルにすり寄りつつあるサウジや、イスラエルを支援して正常化を後押ししている米国に対するメッセージだ。パレスチナ人が方程式から除外されている限り、地域全体に安全保障はない。今日の出来事はあらゆる予想を上回るもので、対立関係におけるターニングポイントになるだろう」と述べた。
イスラエルの占領下にあるヨルダン川西岸では今回の大規模攻撃の数カ月前から、イスラエル側の取り締まり強化、パレスチナ市街地での攻撃、パレスチナ人集落へのユダヤ人入植者の襲撃など、暴力が激化していた。ネタニヤフ首相が率いる強硬右派政権の下でパレスチナ人が置かれた環境は悪化し、和平への努力は何年も停滞している。
一方で、サウジとイスラエルは国交正常化に近づきつつあることをそれぞれ示唆。消息筋はこれまでに、サウジ側は米国との防衛条約締結に強い決意を持っており、パレスチナ人に有利な譲歩を引き出すために正常化の合意を遅らせることはないと、ロイターに述べていた。