最新記事
中東

ハマス、周到に用意された「奇襲攻撃」の意図は? イスラエルとサウジの関係正常化阻止か

2023年10月8日(日)18時15分
ロイター

攻撃のタイミングを計る

レバノンにおけるハマスの指導者、オサマ・ハムダン氏はロイターに対し、7日の大規模攻撃により、イスラエル側の安全保障上の要求を受け入れることで平和が実現することはないとアラブ諸国は理解すべきだ、と述べた。

その上で「地域の安定や平和を望むなら、出発点はイスラエルによる占領の終結だ。一部(のアラブの国)は残念ながら、アメリカから安全保障を求めるための入り口がイスラエルにあると想定してしまった」と語った。

ネタニヤフ首相は「暗黒の日に対し強力に報復する」と述べた。

7日に行われたハマスによる攻撃は、イスラエルがエジプトとシリアから攻撃を受けた1973年の第四次中東戦争の開始から50年の節目に行われた。

ハマス幹部は7日の攻撃について、「敵が祝祭に気を取られている適切な時期を指導者は決断する必要があった」と指摘。多方面からの攻撃により「敵はショックを受け、イスラエル軍の情報当局がこの作戦について事前に把握できなかったことが証明された」と述べた。

1973年以降、エジプトとイスラエルは平和条約を結び、複数のアラブ諸国もイスラエルとの関係を正常化させた。だがパレスチナ人は国家樹立の夢はむしろ遠のいている。

米シンクタンク大西洋評議会に所属する元米外交官のリチャード・ルバロン氏は、「それが今回の攻撃の一番の動機だった訳ではないだろうが、ハマスの行動は、パレスチナの問題は国交正常化交渉の中のサブトピックの1つとして扱われるべきではないということをサウジに明確に示した」と述べた。

イランの動き

米バイデン政権の高官は、今回の衝突がサウジとイスラエルの国交正常化交渉に及ぼす影響について、「推測するには時期尚早だ」と記者団に述べた。

この高官は、「ハマスのようなテロリスト集団が(正常化交渉に)影響を与えることはないと断言できる。(交渉には)いろいろな道筋がある」と述べた。

ネタニヤフ首相は以前、イスラエルとアラブ諸国の和平合意について、パレスチナに拒否権を持たせるべきではないと述べていた。

サウジとイスラエル、米国の交渉に詳しい地域の消息筋は、パレスチナへの譲歩を拒否するイスラエルは過ちを犯していると話した。

7日の衝突を受け、サウジは双方に「暴力の即時停止」を求めた。

一方のイランは、パレスチナ人による自衛の行動だと表明。最高指導者ハメネイ師の顧問は、イラン政府は「パレスチナとエルサレムが開放されるまで」パレスチナの武装勢力と共にあり続けると述べた。

ハマスに近いパレスチナ当局者は、「(今回)イスラエルに向けて放たれた全てのロケットをイランは把握している。イランが指示したというわけではないが、ハマスなどが兵器を近代化できたのがイランのお陰だということは周知の事実だ」と述べた。

イランは中東一帯で数々の武装勢力を支援しており、ガザのほかレバノンやリア、イラク、イエメンで存在感を高めている。

イエメンの親イラン武装組織フーシ派は先週、サウジとの国境沿いにバーレーン軍兵士を攻撃して4人を殺害。これについて、アナリストはイランがサウジに警告したものだと指摘していた。

ワシントン近東政策研究所に所属する元米外交官のデニス・ロス氏は7日の攻撃について、「米国とサウジ、イスラエルの間で画期的な合意が成立するのを阻止する狙いがあった」と断言した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

資産運用
「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒れる今こそ投資家が目を向ける「世界通貨」とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUのロシア産原油輸入停止法制化案、ハンガリー議会

ワールド

トランプ氏、一般教書演説で「強く繁栄する米国」強調

ワールド

米政府、インドなどアジア3カ国の太陽光製品に暫定的

ワールド

国連総会、ウクライナ支持決議を採択 米は「交渉の妨
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中