最新記事
エジプト

なぜ日本が協力? 「古代エジプト博士ちゃん」が聞く、大エジプト博物館の魅力

2023年10月11日(水)10時30分
※JICAトピックスより転載

日本語も併記されている大エジプト博物館内部の案内表示

日本語も併記されている大エジプト博物館内部の案内表示

環子さんの夢と、JICAの願い

松永 環子さんは、自分で古代の方法を調べて魚のミイラをつくったとか。今日お持ちいただいていますが、研究熱心で驚きました。

環子 はい。哺乳類のミイラは難しいので、魚屋さんでイナダを買ってもらって、ミイラにしました。棺と重要な臓器を入れるカノポス壺は粘土でつくりました。臓器は人間だと肺などを入れるのですが、魚だったのでエラを入れています。

河合 すごいね。僕はミイラはつくったことがないから、抜かされちゃったな。

松永 今、中学1年生で、ここまで自分で調べ上げて実践するなんて、素晴らしいです。環子さんは将来考古学者になって、叶えたいことがあるそうですね。

環子 「差別のない社会」「平和な世界」「地球に優しい生活」という3つのテーマがあり、この3つは連鎖していると思っています。古代エジプトと今の世界では時間の流れや文化、宗教や習慣は全然違います。でも、同じ人間なので失敗もするし、間違いもします。むしろ、その間違いを認めて改善できればいいと思います。先ほど、遺物の修復でも「相手を尊重する」というお話がありましたが、お互いの違いを認めて大切なものを守ったり、地球温暖化など現代ならではの環境問題解決のヒントを見つけられたりしたらいいと思います。

松永 考古学者という夢の先に、グローバルな視点も持っていてすごいですね。私の所属するJICAも国際協力を通じて差別のない社会、平和な世界を構築しようとしています。環子さんの夢はJICAの願いでもあります。

河合 私も今日は感服しました。環子さんが古代エジプトのことを調べることで、現代人が失ったものがいろいろと見えてくるでしょう。そして、お互いの文化や歴史的な背景を理解したうえで一緒にやっていくことが、将来の夢につながってくると思います。近い将来、ぜひ一緒にエジプトで活動しましょう。ツタンカーメン王妃・アンケセナーメンのお墓はいまだに発見されていません。もしかしたら、環子さんが発見するかもしれないね。

環子さんが手作りした品々と考古学者になって叶えたい夢

(左)環子さんが手作りした品々。左からツタンカーメンのぬいぐるみ「ツタオ」、棺に入った魚のミイラ、ミイラにするときに取り出した臓器を入れる4つのカノポス壺。ミイラの棺は、ルーブル美術館が収蔵する魚のミイラの棺を参考に制作したそう(右)画用紙に手書きしてくれた、環子さんが考古学者になって叶えたい夢

一つの展示品にも隠された努力とドラマが

エジプトへの熱い想いが尽きることのなかった今回の対談。大エジプト博物館に展示・収蔵される数々のツタンカーメンの遺物には、日本の保存修復技術がいかんなく発揮されています。実際に大エジプト博物館に足を運んで、展示品一つひとつの背後にあるエジプト人と日本人の修復にかけた熱い想いと苦労のドラマに思いを馳せる──。その日を楽しみに待ちたいですね。

(関連リンク)
世界が注目する「大エジプト博物館」
エジプトの秘宝を守る(前編)
エジプトの秘宝を守る(後編)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中

ワールド

世界貿易、AI導入で40%近く増加も 格差拡大のリ

ビジネス

インドネシア中銀、予想外の利下げ 独立性に懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中