最新記事
中東

ハマス、奇襲作戦を2年前から周到に準備 戦闘員だけでなく指導者の多くも計画を事前に知らされず

2023年10月10日(火)14時19分

手掛かりを与えない

ハマスがイスラエルへの敵意を抑えたことで、一部の支持者からは公然と批判を浴びた。しかし、こうした動きもまた、ハマスの関心は戦闘ではなく経済に向いているという印象を植え付けるのに役立ったと消息筋は語った。

ヨルダン川西岸地区では、ハマスの沈黙に嘲笑を浴びせる人々もいた。昨年6月にパレスチナ自治政府のアッバス議長が率いる主流派組織ファタハが発表した声明では、ハマスの指導者らが国外に逃れ、「豪華なホテルや別荘」に住んでいると非難した。

さらに別のイスラエル安全保障筋によると、イスラエルはガザ地区におけるハマス指導者のシンワル氏が、ユダヤ人殺害よりもガザ地区の運営に注力していると信じていた時期があった。

また、イスラエル自体もサウジアラビアとの関係正常化に取り組み、ハマスから関心が逸れていたという。

ハマス指導者の多くは計画を知らされておらず、攻撃に投入された1000人の戦闘員も訓練中には正確な目的を全く知らされなかったという。

ハマスの情報筋によると、作戦は4つの部分に分けられていた。初動はガザ地区から3000発のロケット弾が発射され、同時に電動パラグライダーなどにより戦闘員が上空から侵入。グライダーに乗った戦闘員は地上に降り立つと陣地を確保し、イスラエルが築いた防壁に対する攻撃準備を整えた。

戦闘員は爆薬で防壁を破壊し、オートバイで侵入。ブルドーザーが隙間を広げ、さらに多くの戦闘員が四輪駆動車でイスラエル側に侵入した。

イスラエルに大きな被害

消息筋によると、ハマスの特殊部隊はイスラエル軍のガザ南部司令部を攻撃し、通信を妨害した。ハマスに近い消息筋によると、作戦の最終部分は人質のガザ地区への移動で、その大半が攻撃の初期に達成された。ガザ地区の近くでは、音楽フェスの参加者が人質となった。

イスラエル治安筋によると、イスラエル軍はガザ地区に近い南部ではフル稼働していなかった。イスラエル人入植者とパレスチナ人武装勢力の間で暴力の応酬が急増し、一部の部隊がイスラエル人入植者を守るためにヨルダン川西岸地区に再配置されたという。「彼ら(ハマス)はその機に乗じた」という。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾との平和的統一の見通し悪化、独立「断固阻止」と

ワールド

北朝鮮、韓国に向け新たに600個のごみ風船=韓国

ワールド

OPECプラス、2日会合はリヤドで一部対面開催か=

ワールド

アングル:デモやめ政界へ、欧州議会目指すグレタ世代
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 5

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 6

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 7

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 8

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 9

    「娘を見て!」「ひどい母親」 ケリー・ピケ、自分の…

  • 10

    中国海外留学生「借金踏み倒し=愛国活動」のありえ…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中