地球温暖化とどう向き合う? データと行動で希望を語る「エコリアリスト」に聞く

HOPE ON CLIMATE CHANGE

2023年9月22日(金)13時00分
ダン・ハーリー(サイエンスライター)

230912P18_KHD_06.jpg

太陽光パネルなど、再生エネルギーの活用が急増(ドイツのリンゴ園) ANDREAS RENTZ/GETTY IMAGES

エコ不安から抜け出すには

ブロズは当初、真面目な組織と受け止めてもらえず苦労していた。だが今年4月、ニューヨーク・タイムズ紙に「気候変動と闘うには、旧来の環境保護の陰気さを捨て去り、新たなテクノロジーの可能性に焦点を合わせるのが一番だ」と考える団体と評されたことをきっかけに、そのメッセージに注目が集まっている。

6歳で環境保護に目覚めた冒頭のスペクターは、気候変動を原因とする不安や鬱から抜け出すために、ポートランドを拠点とする心理学者で「エコセラピー」専門家のトマス・ドハティーに助けを求めた。

ドハティーがエコ不安の治療を始めたのは10年以上前だ。この問題への認知が広がるなか、今では「気候意識」の高いセラピストたちによるNPOの北米気候心理学同盟といった仲間も誕生している。

不安は正当なものだと安心させることが役目の1つだと、ドハティーは言う。「クライアントは多くの場合、こう感じるのは自分だけだと孤独感を募らせている。懸念を共有する人々との交流を促している」

現在25歳のスペクターが治療を受け始めたのは昨年の春だ。「本当に助けになった」と、彼は話す。「差し迫った事態だとの意識にとらわれていたが、実際には何十年もかかると気付くことができた。常に最前線で闘わなければと感じていたが、持続可能であるためには、時によって立ち位置を変えられると認識すべきだと言われた。前に出ることも、後ろに下がることもできる。自分を責めすぎていた」

気候変動による惨事のニュースばかり読まず、環境に優しいとは限らない企業に勤める旧友を含めて、友人と会うことも勧められた。「以前より確実に気分が明るくなった」と、スペクターは言う。「陰鬱な環境活動家として生き続けるわけにはいかない、と理解したのだと思う」

気候変動のせいで絶望に陥っても意味がない。それでなくとも、事態は十分深刻なのだから。

sdgsaward_lp_bnr500.bmp

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪総選挙は与党が勝利、反トランプ追い風 首相続投は

ビジネス

バークシャー第1四半期、現金保有は過去最高 山火事

ビジネス

バフェット氏、トランプ関税批判 日本の5大商社株「

ビジネス

バフェット氏、バークシャーCEOを年末に退任 後任
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 8
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 9
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 10
    海に「大量のマイクロプラスチック」が存在すること…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中