最新記事
ウクライナ情勢

ロシア戦闘機との銃撃戦の末、黒海の戦略的な一部を奪還したウクライナ特殊部隊をリアル映像で

Ukraine creates "naval history" by retaking Black Sea oil rigs: expert

2023年9月12日(火)18時32分
ブレンダン・コール

ボートでロシア領の目標に接近するウクライナの特殊部隊 SCREEN FROM GUR TELEGRAM CHANNEL

<ウクライナの特殊部隊が戦闘機と交戦の末、ロシアに奪われていた黒海の石油掘削プラットフォームの一つを奪い返した。ロシア軍の基地としても使われていたこのプラットフォームを奪えば、黒海の制海権の一部を手にし、穀物の輸出再開も可能になる>

<動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部隊がロシア軍の塹壕に突入

ウクライナ政府は、黒海にある戦略的に重要な天然ガス・石油採掘海洋プラットフォームの支配権をロシアから奪還したと発表した。

ウクライナ国防省情報総局(GUR)は、メッセージアプリ「テレグラム」上で、クリミアとオデーサの中間に位置する黒海北西の海域に建設された天然ガス・石油採掘プラットフォーム、通称「ボイコ・タワーズ」をロシア側から奪還したと述べた。

ある専門家は本誌に対して、この展開は「大きな意味を持つ出来事」であり、これによってロシア海軍が今後、この海域で作戦展開ができなくなる可能性もあると指摘した。

GURに9月11日に明らかにしたところでは、奪還作戦の際には小型艦艇に乗り込んだウクライナ軍の特殊部隊とロシア軍のスホーイSu30戦闘機の間で戦闘が起きたが、Su30は被弾して撤退を余儀なくされたとした。

ウクライナ軍はこの奪還作戦で掘削プラットフォーム「ペトロ・ゴドバレツ」と「ウクライナ」に加え、移動式掘削装置「タブリダ」と「シバシュ」の支配権を奪還したと発表した。これらの施設は、2014年にロシアが一方的にクリミアを併合して以降、親ロシア派の支配下にあった。

「クリミア奪還も近い?」

GURはテレグラム上に、作戦の様子を撮影した13分間の動画を投稿した。動画には、ウクライナ軍の兵士が小型艦艇で接近し、プラットフォームに乗り込む様子が映っていた。またロシア軍の空中発射式非誘導ミサイルや、船舶の動きを追跡できる「Neva」レーダー基地の姿も捉えられていた。

動画は、ボイコ・タワーズの支配権を奪還することがいかに「戦略的に重要」だったかを説明。また奪還成功の結果、「ロシアは黒海海域の完全な支配能力を奪われ」、これによりウクライナはクリミア奪還に「大きく近づいた」とも述べた。

この動画については第三者による検証が行われておらず、本誌はウクライナ側の主張についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

トルコのイスタンブールに拠点を置く独立系海事コンサルティング会社「ボスポラス・オブザーバー」のヨリュク・ウシュクは、今回の奪還はウクライナにとって重要な成果だと述べた。「これでロシア海軍が黒海北西の海域で作戦を展開する能力は完全に失われた」と彼は本誌に語った。「ウクライナはほとんど海軍がいない国でありながら、冷戦時代に築き上げた巨大艦船を持つ海軍を相手に成果を勝ち取るという、歴史的な偉業を達成し続けた」

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、関税巡る不透明感で「様子見姿勢」=ミネアポ

ビジネス

米FRBの「適度に制約的な」政策スタンス適切=ボス

ワールド

トランプ氏、NATO相互防衛条項に疑問呈す 首脳会

ビジネス

米ドルは主要な基軸通貨、地位に「脅威なし」=NY連
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 7
    イスラエル・イラン紛争はロシアの影響力凋落の第一…
  • 8
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 9
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 10
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中