最新記事
動物

大型ハリケーンが近付く海域で、数百匹のサメが集結する様子を撮影...気象の専門家からも注目集まる

Hundreds of Pregnant Sharks Gather in California During Hilary

2023年8月27日(日)20時00分
アンナ・スキナー
水面から見えるサメの背びれ

USO/iStock

<ハリケーン「ヒラリー」が接近するなかでも、米カリフォルニア州の浅瀬には妊娠中のトラフザメが数多く集まっていた>

熱帯低気圧「ヒラリー」が米カリフォルニア州を通過した8月21日、数百匹のトラフザメが同州サンディエゴの町ラホヤの浅瀬に集結している様子が目撃された。この様子は動画にも撮影されたが、妊娠中のメスが浅瀬に集まるサメの習性は、ハリケーン予測に役立てるため気象学者たちの注目も集めている。

■【動画】そこらじゅうサメだらけ...浅瀬で群れになって泳ぐトラフザメ(とコウモリエイ)

「ヒラリー」は16日に発生し、急速に勢力を強めてわずか24時間で熱帯暴風雨からハリケーンに発達。18日早朝にはカテゴリー4のハリケーンとなり、風速は60メートルを超えた。

その後、風の勢いは弱まり、週末にかけてメキシコのバハカリフォルニア半島を通過する頃には、カテゴリー1に。さらにカリフォルニア州を通過するなかで勢力を弱め、熱帯性暴風雨となったが、それでも周辺地域に大雨と洪水の脅威をもたらしていた。

一般的にハリケーンや激しい嵐が迫っているとき、サメは普段よりも深い水域に避難するという。だが、X(旧Twitter)に投稿された今回の動画には、少なくとも200匹の妊娠中のトラフザメが普段どおりに浅瀬に集まって過ごしている様子が捉えられていた。

米ポイント・ロマ・ナゼレン大学のアンドリュー・ノーザル准教授(生物学)はXに、トラフザメたちが浅瀬で泳いでいる様子を捉えた動画を投稿。「ハリケーン『ヒラリー』が明日にもサンディエゴに到達するとみられているなか、今朝は大量のトラフザメとコウモリエイが浅瀬にいた。嵐が通り過ぎた後に、また彼らの様子をチェックしてみたい。皆さん、安全にお過ごしください」という言葉を添えた。

トラフザメの「避難」行動に科学者は注目

ノーザルは本誌に対して、浅瀬にいたトラフザメは大半が妊娠中のメスだったと語った。カリフォルニア州サンディエゴの町ラホヤの海岸線は、水温が比較的高く波が穏やかなため、トラフザメが集まることが多いという。

「孵化を早めるために受精卵を温めている、というのが我々の仮説だ」とノーザルは述べた。だが彼が率いる研究チームが関心を寄せていたのは、ハリケーンのなかでトラフザメがより深い水域に「避難」するかどうかだったという。

サメはハリケーンの接近前に、気圧の変化を感じ取ることができる。その変化への反応は種によって異なり、より深い水域に避難するサメもいれば、大型の種はそのままの場所にとどまる傾向にある。一部の専門家は、海洋学的データを集めてハリケーン予測に役立てるために、サメにタグをつけて観察する試みを行っており、気象の専門家もサメのこの能力に強い関心を寄せている。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「パウエル議長よりも金利を理解」、利下げ

ワールド

一部の関税合意は数週間以内、中国とは協議していない

ワールド

今年のロシア財政赤字見通し悪化、原油価格低迷で想定

ワールド

中国、新型コロナの発生源は米国と改めて主張 米主張
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中