最新記事
自然

シャチの群れが母子クジラを襲撃...子供を必死で守る母の姿に「胸が締め付けられる」

Watch Mother Whale Desperately Trying to Save Calf From Brutal Orca Attack

2023年5月21日(日)08時00分
アリストス・ジョージャウ
野生のシャチ

写真はイメージです Michel VIARD/Shutterstock

<オレゴン州の写真家が撮影した映像には、連携して子クジラを攻撃する9頭以上のシャチと、敵から子供を引き離そうとする母クジラの姿が>

オレゴン州沖で、コククジラの親子がシャチの群れに襲われ、母クジラが子クジラを必死に守ろうとしたものの、子クジラが命を落とす様子が映像に捉えられた。自然写真家で映画製作者でもあるジャクリン・ラーセンは、5月8日にオレゴン州沖でこの映像を撮影した。

■【動画】子クジラを攻撃するシャチの群れと、敵から子供を引き離そうとする母クジラ

同州中央の沿岸部に住むラーセンは、その日にクジラが目撃されたと報告された場所が見渡せるデビルズ・パンチボウルという観測地点に機材を持って向かった。「シャチが明らかに5頭以上いて、大きな水しぶき、ヒレ、呼吸による潮吹きが肉眼で確認できた」と、ラーセンは本誌に語った。

ラーセンによると、シャチは少なくとも9頭いたという。「カメラを構えると、すさまじい状況だった。母クジラと子クジラはシャチから逃げようとしていたが、シャチは容赦なかった」

母親は子供を必死に守ろうとしたが、シャチの一斉攻撃から子供を救うことはできなかった。

「コククジラの親子の呼吸は、海面に浮上したときに確認できた。母親はシャチたちの間にとどまろうとしているようだったが、しばらくすると、母親の呼吸しか確認できなくなった」とラーセンは振り返る。「ドローンを飛ばし、クジラが見えるとすぐに、子クジラがすでに死んでいることがわかった」

ラーセンが見たところ、子クジラの死因は溺死だったようだ。「科学者や研究者から学んでいる私の理解では、シャチはしばしば獲物に強い打撃を与えて傷つけるが、実際に獲物を殺すときは溺死させることが多い」

母クジラは子供を水面に押し上げようとした

ドローンを使って撮影していたラーセンは、画面に映し出される光景に感情を揺さぶられたという。

「母親は死んだ子供を守ろうとし続けたが、シャチは母親の周りに群がって巧みに動き回り、子供から引き離そうとした」とラーセンは言う。「母親は、子供と一緒に潜るシャチの群れを追いかけ、子供のそばにいようとした。時間が経つにつれて、母親の動きが少しずつ鈍くなっていった。シャチの攻撃を受けたのだろう」

シャチが子クジラを捕らえようとし続けるなかで、母クジラは何度も子クジラを水面に押し上げようとしたという。「そのたびに胸が締め付けられた」とラーセンは言う。

シャチの攻撃はラーセンが観察し始める1時間前から始まり、3時間続いた。子クジラのそばから離れないようにしていた母クジラは、日が暮れて暗くなると、ゆっくりとその場を離れたという。

ラーセンは言う。「この映像を公開することで私が望むのは、センセーショナルなコンテンツを作ることではなく、私たちの世界がいかに素晴らしく、時に美しく、残酷であるかを人々に再認識してもらうことだ」


建築
顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を持つ「異色」の建築設計事務所
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏の出生権主義見直し、地裁が再び差し止め 

ワールド

米国務長官、ASEAN地域の重要性強調 関税攻勢の

ワールド

英仏、核抑止力で「歴史的」連携 首脳が合意

ビジネス

米エヌビディア時価総額、終値ベースで4兆ドル突破
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 8
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    昼寝中のはずが...モニターが映し出した赤ちゃんの「…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中