最新記事
ウクライナ

ウクライナ化学工場へのミサイル攻撃で「有害物質」飛散か...映像が示す凄まじい爆発の規模

Pavlohrad Chemical Plant Blast Could Spell Eco-Disaster for Ukraine

2023年5月6日(土)11時14分
アレックス・フィリップス
ウクライナ・パウロフラード化学工場の爆発

@WarMonitors

<ロシア軍のミサイル攻撃によるものとみられる大規模な爆発が発生した施設は、ウクライナが反撃にでる際には重要な拠点になるはずの場所だった>

ロケット燃料を保管していたウクライナ東部の化学工場周辺の貯蔵施設で、ロシアのミサイル攻撃によるものと見られる爆発が発生。この施設はウクライナが「反撃」に出る場合に重要となる地点に位置しているが、映像にも捉えられている大規模な爆発により、ウクライナの戦略に狂いが生じる可能性に加えて、環境災害の危険性も懸念されている。

■【映像】最初の爆発から約20秒後に起きた大爆発...ウクライナ化学工場へのミサイル攻撃か

4月30日、ドニプロペトローウシク州の都市パウロフラードの近郊で起きた今回の大爆発の映像が公開された。当初は、ロシアのミサイル攻撃によって鉄道駅が爆発したものと考えられていたが、その後、爆発したのは近くの化学工場周辺だと特定された。

パウロフラードは戦略的に、ウクライナがここを通って反撃を仕掛ける可能性がある地域だ。ロシア政府はこのミサイル攻撃に先立って、ウクライナ軍の弾薬、武器、装備の生産に使われている施設を標的にすると表明していた。

パウロフラード化学工場とは、ソビエト連邦時代に大陸間弾道ミサイルの燃料供給施設だった場所。しかしその後、燃料リサイクル施設に転換していた。

さらにこの工場は、ミサイル「アルダーM」や「ネプチューン」の試験の際にも使用されてきた。後者は2022年、黒海でロシア旗艦「モスクワ」が撃沈されたときに使われたミサイルだ。この施設は、ロシア軍がウクライナによる反撃を警戒しているドンバス地方への道路沿いにある。

大陸間弾道ミサイルのブースターロケットを保存

オープンソース・インテリジェンスの専門家オリバー・アレクサンダーが5月1日、映像の中で爆発が起きている場所を特定した。アレクサンダーはツイッターで、工場が攻撃されたことと、ここには廃棄された大陸間弾道ミサイル「SS-24」のブースターロケットが保管されていたと確認されたようだと述べている。

工場が位置するドニプロペトローウシク州のセルヒー・リサク知事は1日、テレグラムの投稿で、「産業が被害を受けた」と報告した。リサクはさらに、「火災が発生したが、すでに消火された」と説明している。

汚染に関するアドバイスを提供するダウンストリーム・ストラテジーズのプリンシパル環境コンサルタント、マーク・グラスは本誌の取材に対し、この火災で発生した汚染物質は、「不完全燃焼で発生する粒子状物質や炭化水素の類いとみられる」と述べた。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:高級品業界が頼る中東富裕層、地政学リスク

ワールド

トランプ氏、イラン制裁解除計画を撤回 必要なら再爆

ワールド

トランプ氏、金利1%に引き下げ希望 「パウエル議長

ワールド

トランプ氏「北朝鮮問題は解決可能」、金正恩氏と良好
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中