最新記事

サイエンス

核爆発までの数秒間...家の中で絶対に避けるべき3カ所と、即座に駆け込むべき場所

2023年1月21日(土)19時50分
ウルジャ・カルヤニ
窓から差し込む光イメージ画像

Kayoko Hayashi-iStock

<頑丈な建物内で、爆発方向にある「壁の裏」に隠れることで爆風による危険を免れる可能性が高くなるという>

ロシアとウクライナの戦争が激化するなか、核爆発の脅威が高まっている。こうしたなか、キプロスの研究チームが爆発のシミュレーションを用いて、核攻撃の際に人々が取るべき「最善の避難行動」を発見。学術誌「Physics of Fluid(流体物理学)」に研究論文を発表した。

■【写真】どこなら避けられるか? 室内における爆風の流れシミュレーション画像

研究チームはこの中で、核爆発が起きた際の避難場所として「最も危険な3つの場所」を提示。生き残る可能性を高めるためには、これらの場所を避けるべきだとアドバイスした。

論文の筆頭著者であるニコシア大学のイオニアス・コキナキス博士はプレスリリースの中で、「屋内で最も危険な場所は、窓際と廊下、そしてドアの近くだ」と述べ、さらにこう続けた。「これらの場所に近づいてはならない。爆発が起きた方向に面した部屋でも、隅の(爆発方向の)壁の裏側にいれば、爆風から身を守ることができる可能性がある」

研究チームは最先端のコンピューターモデルを使い、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の核爆発が建物にどのような衝撃をもたらすのかを分析した。

それによれば、爆心地に近い地域では、一部の建物は破壊されるものの、コンクリート製の構造物ならば爆風に耐えられる可能性がある。だが頑丈な構造物の中にいても、大怪我のリスクがない訳ではないということだ。

また爆発の瞬間から爆風が到達するまでの時間は数秒しかないため、安全な避難場所を迅速に見つける必要がある。

鉄筋コンクリート製の建物でも安心はできない

論文の執筆者であるディミトリス・ドリカキスは英ニュース専門局の「スカイ・ニュース」に対して、「今回の研究が実施される前は、爆風に耐える鉄筋コンクリート製の建物の中にいる人々にどの程度の危険があるのか、はっきり分かっていなかった」と述べ、さらにこう続けた。

「我々の研究により、(鉄筋コンクリート製の建物の中にいても)猛スピードで吹きつける爆風はかなり危険で、大怪我や、場合によっては死につながる可能性があることが分かった」

研究結果によれば、頑丈な構造物の中に避難するだけでは怪我を防ぐには不十分だ。また、狭い空間は状況を悪化させる。爆風によって空気が壁に当たって跳ね返り、部屋の隅で曲がったりする可能性がある。場合によっては人間の体重の18倍もの力が発生するという。爆風の勢いで体が宙に浮く可能性も十分にあり、そうなれば怪我のリスクは高まる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、北朝鮮にドローン技術移転 製造も支援=ウク

ビジネス

米6月建設支出、前月比0.4%減 一戸建て住宅への

ビジネス

米シェブロン、4─6月期利益が予想上回る 生産量増

ビジネス

7月ISM製造業景気指数、5カ月連続50割れ 工場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中